先日、アムステルダムに住む友人とミッテ地区にあるレストラン”Chipperfield Kantine(https://www.facebook.com/kantineberlinmitte/)”を訪れた。ここは名前の通り、イギリス人の世界的建築家デイヴィッド・チッパーフィールドがデザインしたレストランであり、チッパーフィールドのデザインオフィスに隣接されている。
“Kantine”とはドイツ語で”食堂”という意味を持つのだが、凹凸のないミニマルなコンクリート建築の同店はコンテンポラリーギャラリーのようにモダンで洗練されており、客層も一見ベルリンとは思えないほどスタイリッシュな人が多いため、とても”食堂”には見えない。
しかし、デザインオフィスのスタッフが日々利用する”社員食堂”であることは事実であり、そこを一般開放しているというユニークなスタイル。そのため、モダンなレストランにはない”食堂スタイル”に思わずほっこりさせられる。まず、入ってすぐにレジカウンターがあり、シンプルに記載されたメニューの中からオーダーし、先に会計を済ます。会計が終わったら、大理石のオープンキッチンカウンターの上にあるパンとガラス瓶に入った水を取り、1階か2階のテーブルに着く。パンはなんと食べ放題という太っ腹。料理は後からスタッフが持って来てくれるスタイルとなっていて、最近ではベルリンでも増えてきてはいるが、水の無料提供も嬉しいサービスの一つ。
一階の内観。天候の悪い日でもランチタイムは常に満席で、入り口に並ぶ人が続出する。
二階の内観。大きなテーブルに相席が基本となっており、団体の場合は事前予約が可能となっている。
ランチメニューは日替わりとなっており、私たちが訪れた時は、肉料理は一種類のみで、サラダメニュー多め、その他に、パスタ、スープ、デザート、ドリンクメニューがあった。価格はプレートメニューで10ユーロ前後とベルリンのランチの平均ではあるが、驚いたのはそのボリュームである。豚肉の煮込みプレートとレンズ豆のサラダをオーダーしたが、どちらも大きなプレートに山盛り。肉料理に関しては男性であっても食べきれないほどである。
しかも、味も完璧である。お得なランチは、大味だったり、しょっぱい、甘い、濃いといった偏った味になってしまい、残念な結果を生むことが多々ある。しかし、同店においては新鮮な野菜にオリジナルドレッシングが絶妙で、柔らかくて飽きのこない肉、付け合わせのマッシュポテトでさえ完食してしまいたくなる美味しさだった。
物価の高いアムステルダムに住む友人は”なぜこの価格でこんなクオリティーの高いものを提供出来るのか?”と、真剣にスタッフに尋ねていた(笑)が、そうさせるほどのクオリティーなのだ。
話に夢中で途中まで気づかなかったのだが、店内の端にはパン焼き器が設置されており、パンを温めたり、焼いたりして食べることが出来る。食べ終わった食器は一階のオープンキッチンの奥まで持参するのがルール。これぞまさに”食堂スタイル”であるが、とにかく洗練されていて開放的な店内でハイクオリティーな食事と、感じの良いスタッフにより、本当に居心地の良い”お得ランチ”を食べることが出来る最高のスポットである。夏季には中庭がオープンテラスとして開放されるようになっていて、さらに開放的な空間で食事を楽しむことが出来る。
実は、これまでに何度か日本の媒体に取材したいと申し出たのだけど、なぜかOKが出なかった。今になってしまったが自分のページで紹介することが出来てよかったけれど、正直あまり教えたくないという心境にもなっている。
デイヴィッド・チッパーフィールドの建築に関しては、同じくミッテ地区にある新博物館やジェームズ・サイモン・ギャラリーなどが有名で、ベルリンへ来た際には是非とも合わせて訪れて欲しい。
尚、レストランは、ブレックファーストとランチがメインとなっており、平日から常に混雑しているため、ランチタイムのピークを外して行くことをオススメする。また、一般利用出来るテーブルも決まっているため、勝手に座らずにスタッフに確認することをオススメする。
長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。