中年男性を可愛く描く、作家・こじましほさん “おっさん”雑貨でファンを広げる

2025/06/02 11:00 更新


こじましほさん

 「こじまおっさん」は、こじましほさんが手がける雑貨ブランド。中年男性を可愛く描いたアイテムが百貨店やファッションビルで期間限定店を通じて、多くのファンから支持されている。これまでやりたいと思ったことは何でも挑戦してきたこじまさん。「思い立ったらすぐ動く。なんであの時行動しなかったんだ、という後悔はしたくない」がモットーだ。

(森田雄也)

美容師から転身

 こじまさんの経歴は多様だ。美容専門学校を卒業し、美容師として19歳のころから働いていた。キャリアを積み、25歳で店長を務めていたころ「絵の仕事もしてみたい」と思い、美容師を辞め、今度はグラフィックを学べる名古屋の専門学校に入った。その時、たまたま学校に三重県の子供の絵本専門店メリーゴーランドの店主が講義で来ていたことをきっかけに、絵本に興味を持った。

 専門学校を卒業してからも絵本への興味は尽きず、プロ志望者向けの絵本塾に入った。フリーの編集者の講義を受け、約30年前には『へびかんこうセンター』で絵本作家としてデビュー。『どんちゃんぐりちゃん』など計3冊を出版した。

 ただ、大ヒットしなければ、「絵本作家だけではなかなか食べていけない」ことから、美容師のアルバイトで生活をつないでいた。そんな当時、趣味ではまっていたのが消しゴムを彫ってのハンコ制作。ファックスに押印していたところ「作って欲しい」と声がかかるようになった。知り合いの作家から「これは売った方が良い」と勧められ、マルシェなどに出ると反響があった。

 これがハンコ作家としてのデビューとなった。学校の先生が生徒の宿題をチェックした時に押すために買っていったり、子供の名前のオーダーハンコも受けていった。ハンコは20年前から始め、これまでオーダーだけで3万~4万個を販売。既製品を入れると累計販売数は10万個近くになるという。

 中年男性をユーモアなイラストにした雑貨、こじまおっさんをスタートしたのは10年ほど前。こじまさんはザ・ドリフターズを見て育った世代。よく落書きのようにおじさんの絵を描いていた。「これを立体にして雑貨にしたら面白そう」。そう思って立ち上げた。

インパクトあるがま口財布

自ら店頭に立つ

 アイテムはブローチやペンカバー、バッグ、ぬいぐるみ、ティッシュカバー、ボトルカバー、がま口財布など幅広い。頭髪が薄くなり、鼻毛が長く伸びたユーモアあふれるおじさんのアイコンが特徴。他にもパンダや犬、熊などをモチーフにしたアイテムもある。手芸専門店で生地を自ら選び、基本的に全てこじまさんのハンドメイドだ。価格は700円から、バッグだと1万8000円ほどの商品もある。

鼻から長い毛が伸びたおじさんモチーフのボトルケース

 販売は主に百貨店での期間限定店。今年4月から5月にかけてラシックで作り手達が販売するイベント「クリフェス」に出店。5月には妹の八巻千華子さんとおいの八巻咲志さんと共同で、岐阜市のギャラリーゲッカで展示販売会も開いた。8月には阪急うめだ本店、10月には博多阪急にも期間限定を出す予定だ。「買ってくれる人の表情を見るのが好き」と自ら店頭に立っての販売を好む。

5月に岐阜市のギャラリーゲッカで開いた展示会(中央がこじましほさん)

 インスタグラムではフォロワーが4000人を超えるまでファンが増えた。「もっとたくさんの人に知ってもらいたい」とこじまさんは話す。



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