水路や風車,木靴の国、オランダ。最近、殊に自然・環境対応型の商品分野において、オランダ発のユニークかつ斬新なアイディアに出会う機会が重なった。オランダは昔から貿易で栄えてきた国であり、商才に富んでいるのはわかる。でも、その強い環境意識はどこからくるのだろうか。
省ゴミ化を追求するElementumのデザイナー、ダニエラ・パイス(在オランダ)さんに尋ねてみると、「土地が狭く、湿地を埋め立てて街を造ってきた国 。ちょっとした環境の変化にも敏感にならざるを得ず、また難しい自然環境とうまくやっていかなければならないからじゃないかしら」と説得力のある仮説を立ててくれた。
最近出会った商品の幾つかをご紹介する。
“MUD JEANS(マッド・ジーンズ)”(レーネン)
リース契約制によりオーガニック・ジーンズのリサイクリングシステム構築に成功し近年欧州で話題を呼んでいる。
顧客は使用後ジーンズを返却し、新品5モデル、もしくは割安なビンテージ品に交換する仕組み。生地はマッド・ジーンズが所有する、という考えに基づき、修理は無料だ。支払いはこれまでは月極定額制だったが、今後は購入時の一括払い制(新品:119ユーロ)に代わる。
古いジーンズを返却すると30ユーロ分安く新品と交換できるようになる。
履き古されたデニムはリサイクルへ。 破損の少ない品は環境負荷もコストより低いビンテージ・ラインにアップサイクリングする。服を所有しない、という点でも、時代を先どる。
“OAT(オート)”(アムステルダム)
有害物質を含まず完全に有機分解可能な特殊加工の牛革から作ったスニーカーのブランド。
革を土に還らせそこへ植物を、というエコ的発想から、靴に花の種を添えて販売している。種を添えるとしかし域外への輸出が難しい。来秋からは販路拡大を狙い、売上の一部を公園整備プロジェクトに寄付するコンセプトを追加する。
“ELEMENTUM(エレメントゥム)”(アイントホーフェン)
一着で何通りもの着方をさせることで無駄な消費を防ぐコンセプトのブランド。環境・倫理面からオーガニックコットンやベビーアルパカなど良質な素材を選び、国内また近隣での生産を心がける。
またチューブ状の伸縮性生地を使うことで裁縫を避けゴミも最小限に抑える。写真では同一のモデルをドレスまたベストとして2通りに着用している。ホームページ上では多様な着方が紹介されている。
“SENZ(センズ)”( ファルケンブルク)
空気抵抗が少ない非対称な形状により、暴風雨でもひっくり返らず、壊れない傘のブランド。
2004年、当時工科大学の学生だったヘルヴィン・ホーフェンドルン氏が、強風の度に壊れる傘に嫌気がさし、風速100km/時(長傘。自動折り畳みは80km)に耐えうる傘を開発。2006年から製造・販売を開始した。
雨の中でも自転車移動する人が多いオランダでは、特製スタンドで自転車に固定して使う人もいるという。
これまでは無地で基本色の傘がメインだったが、今後はファッショナブルなラインの販売を本格化していく構え。アジアでのディストリビューターも探している。
フランクフルト在住。身長152cm。大きなドイツ人の中にいると小人のように見えるらしい。小回りだけは利くジャーナリスト兼通訳。ファッションからヘルスケアまでをカバーする。