独サッカー、華やぎ添える監督たち(吉田恵子)

2014/03/06 11:00 更新


近年ドイツサッカー界のベンチに新しい現象が起きている。ドイツにおいてサッカーは伝統的に男くささの象徴のようなスポーツ。観戦する女性は増えたものの、サッカースタジアムを陣取るのは野太い歌声を発する男性たちが中心だ。監督達も、ジャージー姿、またはそこらの会社員風(多くの場合はサイズが幾分大きすぎる)スーツ姿、というのが標準だった。

しかし近年、スタジアムに花を添え、観客の目を楽しませてくれる監督が登場してきている。彼らの着こなしは、女性はもちろんのこと、憧れの存在として男性からも注目をうけている。

 


レーヴ監督(前)(写真 NewSport!誌WM2014特別号)

 

新傾向の代表格は、2006年からドイツ代表チームのヨアヒム・レーヴ監督(54)だろう。

大体は、細身の身体にフィットするスリムな白いワイシャツに、黒目のスーツ(噂ではHugo Bossが多い)を身にまとう。ワイシャツの代わりに、カシミアのVネックセーターを素肌の上に着ていたりもするが、これも嫌みなく似合う。多様なスカーフのコレクションを持つことでも有名。巻き方も毎回工夫がみられる。時々ハッとさせるような華麗な結び方を見せるが、全体が黒っぽいことから、決して派手にはならない。例えば、こんな感じ。

英国の新聞でもベストドレッサーの一人に選ばれたという。独デザイナー、ミヒャエル・ミヒャルスキーに、「レーヴの着こなしのようにプレイすれば代表チームは勝てる」(Welt紙)といわせ、その着こなしには、規律を保ちながらも、思い切った選手起用も厭わない人柄が、表れているようだ。プライベートな生活を大切にする。公の場には殆ど出てこない奥さんとは28年前に結婚。仲睦まじいことで知られる。

 


グアルディオラ監督(写真 Kicker誌ChampionsLeague特別号より)


昨年、独国内女性ファッション誌「Glamour」の素敵なサッカー監督ランキングでレーヴ監督を凌ぎトップに輝いたのが、昨年監督に就任しFCバイエルンミュンヘンを三冠(DFB杯、UEFAスーパー杯、FIFAクラブW杯)に導いたスペイン人、ジョゼップ・グアルディオラ氏(43)だ。

レーヴ監督同様、スタジアムでは大体はクラシック・エレガンスで決める。テーラーメイドと噂される三つ揃えのスーツに、時にはポケットチーフでドレスアップし、ゲームで巧みな采配を振う。赤が好きなようで、ネクタイや背広の下のセーターにちらつかせるが、バランスは常によく、過剰になることがない。

グアルディオラ氏はFCバルセロナのミッドフェルダーとして活躍し、その後同チームの監督を6年している。代表チーム監督になってから世界に知られるようになったレーヴ氏とは対照的に、常にスターとして輝き続けてきた。他方「(どならず)選手へも静かに話しかける。優秀だが威張らない」(Glamour誌)。家族思いのパパでもある。

両者には、節度があり、コンセプトに基づいたスタイルを保ちつつも、柔軟に変化をつける、といった共通点がある。そしてその能力を、チームの指揮のみならず、着こなしにも発揮している。



フランクフルト在住。身長152cm。大きなドイツ人の中にいると小人のように見えるらしい。小回りだけは利くジャーナリスト兼通訳。ファッションからヘルスケアまでをカバーする。



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