古代の服装や髪型を再現し、当時のファッションを楽しむ団体がいる。九州国立博物館が運営する「きゅーはく女子考古部」のことだ。古代ファッションで古墳や遺跡巡りをする団体は、全国的に珍しく人気があり、応募者も予想以上。抽選の平均倍率は2.5~4培にのぼったという。部員の年齢や住所も幅広く、年度を超えた交流の輪も広がっている。
(小坂麻里子)
模様やひもを組み合わせ
部員のユニフォームは自分たちで作った古代の衣服「貫頭衣」。貫頭衣は縄文時代に苧麻(ちょま)などの繊維を紡いで糸にしたものを織り、2枚縫い合わせて着用するものだ。活動の中では入手しやすい綿のシーチング布を代用した。2メートルの布に頭を通す穴を開けて製作した貫頭衣には、出土品や装飾古墳の壁画など古代の模様を描き、貝を縫い付け装飾している。
麻ひもやカラフルな色のひもを編んでベルトにしてこだわったメンバーもいる。当時のデザインの詳細は不明なため、自由な模様やひもの組み合わせで「部員のオリジナリティーを発揮する活動となった」(西島亜木子企画課主任研究員)という。
さらに、当時を再現したアクセサリーも製作。材料の鹿角は穴を開けてネックレスに、大きな貝は腕輪に加工し、アクセサリーとしてコーディネートを楽しんだ。
安心して知的好奇心満たす
同考古部の設立は15年。考古学が好きで関連イベントや講演会などに行くが、「年配の男性が多くアウェー感がある」「男性がいると遠慮してしまう」という肩身の狭い思いをした女性たちの声がきっかけだった。
その声を受けて、考古学好きな女性が安心して知的好奇心を満たせる場が必要だと考えた。博物館としては、若年層や女性の新たな来館者を開拓したい思いもあった。
部員の応募条件は女性であるということのみ。その結果、20人の募集に対し、初年度で120人ほどの応募があった。抽選の平均倍率は2.5~4培ほどだという。最年少は親子で参加した3歳の子供、最年長は70代だった。福岡県内だけでなく、広島、大阪など遠方からの参加者もいた。
活動内容は遺跡に行く、土器を作るなど実践的なもの。「体験を通して考古学の楽しさを知ってもらうのが狙い」だからだ。
活動実績の発表については、オリジナル貫頭衣のファッションショーを行った年もある。現在は年度を越えた交流なども生まれている。
当初の目的は達成したとして、現在は部員募集を行っていないが、22年には考古学好きな女性のための展示を開催した。23年8月には貫頭衣を着て参加するワークショップなど、古代を楽しむ企画を予定している。