「日常生活に花を取り入れると幸せな気持ちが増す。でも花はすぐに枯れてしまう。多くの人にずっと花の美しさを楽しんでもらうにはどうしたらいいか」。ラッキーナンバースリー(東京)のディレクター兼フラワーデザイナーの寺門千尋さんは考え、試行錯誤を繰り返し、植物をレントゲン撮影する今の手法にたどり着いた。
(高田淳史)
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花をアートに
植物をレントゲン撮影するとモノクロ世界に新たな姿が現れる。透明感のある繊細なシルエット。花の組み合わせや撮影する角度などで見せる表情は様々だ。撮ったレントゲン写真は加工し、彩色を加え、パターンデザインを生み出していく。これまで撮ったレントゲン写真は延べ1000枚以上。「ヒカリ」「Kofu」(光風)など10以上のシリーズがあり、約100柄まで増えている。

多摩美術大学を卒業後、ヘアメイクのアシスタントなどを経て花の世界に飛び込んだ。フラワー装飾などを手掛ける企業に自分を売り込み入社。クライアントニーズを引き出し、フラワーアレンジメントや花柄をデザインに落とし込むパターンデザインのライセンス事業に携わるなど経験を積んだ。
「自分好みのデザインを生み出したい」と20年に独立。「三方良し」の考えと、自身のラッキーナンバーから社名をラッキーナンバースリーとした。しかし、コロナ禍でイベントがなくなり、フラワー装飾の依頼は「ゼロ」。苦しかったが、「時間はたっぷりある」と花をアートとして楽しめるよう様々なデザインに挑戦し、今の手法を確立した。アートブランド「memorif.」(メモリフ)を立ち上げ、「花を束ねるように組み合わせ」フラワーパターンを生み出している。
協業でヒット
ライセンス関連の合同展示会に出たことをきっかけに様々な企業から注目されてるようになり、協業が始まっている。大きなヒットになっているのがウォーターフロント(旧シューズセレクション)との取り組み。長傘(3630円)に加え、折り畳みタイプ(3630円、4290円)も売れており、新たな企画も始まる。

ヒーロジーのリカバリーブラやリカバリーレギンスでもメモリフのパターンデザインが採用され、応援購入サービスのマクアケで大ヒットした。繊維専門商社の田村駒とはパジャマやリラックスウェア、タオルなどで実用化を目指し、話し合いを進めている。

「自分のデザインを店頭で目にしたり、使っている人を見ると本当にうれしい。個人の力ではできることが限られるので、協業を通じてもっと自分のデザインを世に送り出したい」と寺門さん
花を使ったアート制作やイベント装飾、フラワーパターンのライセンス事業などを手掛けながら、ポーチやスマートフォンケース、ノートといった日用品で「自社商品を作りたい」とも。「チューリップ柄のど派手なスカーフやパンツ、スカートなども作りたいし、ゆくゆくは花や自社商品を販売するお店を開きたい」と夢が広がる。