前田織物の前田剛さん 「ちょっと変わった柄」の刺し子織り SNSで魅力伝える

2024/04/24 10:59 更新


前田剛さん

 「小さな時から織機がある工場で過ごしてきた」。そう話すのは、織物の製造・販売の前田織物(東大阪市、前田武社長)の前田剛さん。高齢の父に代わって工場を運営している。得意とするのはタスラン加工や刺し子織り。特に刺し子織りはダイヤや麻の葉文様、肉球など「ちょっと変わった柄」の提案に力を入れる。X(旧ツイッター)での発信に力を入れ、新規開拓を進めている。

(榎田果歩)

学生とかばん製作

 前田織物は約40年前に創業した織物工場だ。当時は壁紙や公営団地の内装向けを織っていた。その後は輸出用のランチョンマットなども製作したが、コロナ禍に入る前からタスラン加工が下火になり、今は剣道着や柔道着、布団、かばん向けの刺し子織りなどが中心。コロナ禍前には大阪芸術大学との産学連携にも取り組み、デザイン学科の学生とかばんを製作した。

 Xで発信を始めたのはコロナ下に入った頃。最初は子供が手伝う様子などを載せていた。当時のフォロワーは100人程で伸び悩み、織機が稼働しているところやタスラン加工の準備の様子などを載せ始めた。アドバイスも受け、24年4月時点でのフォロワー数は7000人を超えている。

 Xで特に力を入れているのが、変わった柄の刺し子織り。元々大手メーカーからの引き合いがあったが、麻の葉文様の刺し子を投稿したところ〝バズった〟。「柄物の刺し子織りはあまりないからでは」と前田さん。小ロットにも対応できる強みを生かし、ハンドメイドを楽しむ人への販売など、新規開拓にもつながった。

 名刺入れやかばんなど、作ったものをSNSにアップしたり前田さんへプレゼントしたりするなど、交流も生まれている。「色付きの刺し子織りはないのか」と問い合わせもあるが、提案するのはあえて生成り。「親子で染めたり柿渋で染めたり、自分でする方が面白いはず」と話す。

生成りで麻の葉など柄物の提案に力を入れる

変わり種にも挑戦

 刺し子織り以外でも、テグスを使った刺し子織りや、拳法の型などで音を出すためにあえて硬い風合いにしたものなど、変わり種の織物にも積極的に挑戦している。「昔ながらのやり方ではなく、ユーチューブやXで発信し、実際に見てもらうことが大切」。他社との協業にも前向きで、「作るのが難しいものもあるが、互いのできる技術を組み合わせ一緒に何かを作り、それが売れたら面白い」と笑顔を浮かべる。

 地元小学校の見学なども受け入れ、動くと大きな音が出る織機などは見せた時に喜んでもらえるという。興味を持った児童に生地をプレゼントしたところ、作品を見せてくれたこともあった。今後はBtoC(企業対消費者取引)にもチャレンジしたい考えだ。

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