「マーク・ジェイコブス」のショーは、どういう意図だったのだろうか。23年秋冬コレクションのランウェー会場は、マークがよく使っているニューヨーク市立図書館1階の長い廊下。いつものように1列に椅子が並べられ、招待客は指定の椅子に着席する。そしてモデルが現れたと思ったら、数珠つなぎのモデルたちが速足に歩いてきた。
つまり、エンディングのシーンなのだ。一気に廊下を歩ききって裏手に入ったと思ったら、1分ほどで裏手から出てきて逆方向に足早に歩き去っていく。ショーはそれだけ。
最後にジェイコブスがあいさつに少しだけ登場した。ほんの3分程度で終わったショーに、「え?これだけ?」とあぜんとする招待客。
配られたリリースは、「オープンAI、チャットGPT」によって書かれたと明記されている。それも含めて、実験的なショーだったということか。タイトルは「マスキュリンなテーラーリングとフェミニンなエレガンスの印象的融合」。メンズウェアにインスパイアされたテーラーリングをフェミニンな美意識と混ぜ合わせながら、強い意志と自信をもつアクティブな女性を描く。
ボディーラインを強調するビュスティエ、肩を強調したジャケットやオーバーサイズのテーラードジャケット。クラシックなドレスの裾をたくし上げてドレープを寄せ、腰回りにブルマーのようなふくらみを作ったショーツやミニドレスもキーアイテムだ。
色は基本モノトーン。透ける黒のレギンス、白のソックス、フラットシューズがルックスにマッチしつつ、心地よさを求める現代女性の気分を反映している。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)