【専門店】オリジナルブランドを強化するメンズ個店 生産現場と直接取り組み

2020/12/13 06:30 更新


 小規模なメンズ個店でもオリジナルブランドの販売が増えている。自店のロゴを入れたスーベニア(土産品)的なTシャツや小物などから生産現場と組んで作り上げた本格的なアウターまで様々。中には地元の工場と直接取り組んだ高品質なオリジナル商品を軸に商品構成しているショップもある。ここでしか買えないオリジナル商品を開発することで自店の魅力づくりにつなげている。

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■「レポートショップ」 差別化へのツールに

 東京・代官山のメンズセレクトショップ「レポートショップ」(運営ケイ・エム・クロージング)はオリジナルブランド「セルクレイグ」「AWM」を軸に仲間のブランド「アモク」「ラキネス」などからの仕入れ品と直接米国から買い付けた古着で構成する。

 同店は「自分で作ったモノを自分で売る」ことが昔からの夢だった小寺宏樹氏が昨年11月に立ち上げ、ショップディレクターを務める。小寺氏は学生時代から大阪の紳士服工場でアルバイトをしながら熟練職人からパターンや縫製技術を学び、13年前に上京してからもOEM(相手先ブランドによる生産)企業に入社し、物作りの現場との取り組みを深めてきた経験がある。そのため、オリジナルブランドの開発もデザインから手掛けている。

 オリジナルブランドはデザイナーブランドと大手セレクトショップのオリジナルの中間を狙った商品。セルクレイグは小寺氏の趣味嗜好(しこう)を強めた大人の上質なジャケットやコートなど。それよりも若い世代を狙ったAWMはシャツやカットソーアイテムなどのカジュアルウェアが中心。10月にルミネエストで期間限定ショップを開設。こうした出店の際に「オリジナル商品は差別化のツールとして強さを発揮できる」とみている。

 今秋冬は米国ミリタリービンテージの名作、M51フィールドパーカ(通称モッズコート)と同じくM51フィールドパンツをアレンジしたデザイン。どちらも粗野感を無くし、クリーンな印象になるように各部分のディテールを簡素化した。生地はハリのある綿ポリエステルのポプリンを使用している。コートとパンツは共地なのでセットアップでもコーディネートできる。グレンチェックのシリーズはポリエステルのタスラン糸とナイロンの混紡生地を使用したステンカラーコート、ユーティリティーベスト、ワイドパンツ。全体的にゆったりとしたデザインで、ベストはコートの上にレイヤードできるようにアームホールや身幅を設計している。カジュアルなデザインながらグレンチェックの柄もあり上品な印象に仕上がった。

M51のフィールドパーカとパンツをアレンジ

 コロナ禍の5月にはクラウドファンディング(CF)を活用してオリジナルブランドを販売することで、苦境に立たされている国内縫製工場を支援するプロジェクトにも取り組んだ。自身の物作り経験を生かしたオリジナルを武器に、新たなニッチマーケットの開拓に挑む。

コートの上にベストがレイヤードできるグレンチェックシリーズ

■「ガレージ」 パーソナル対応に活路

 埼玉県川越市の中心街で35年近く営業を続けるメンズセレクトショップ「ガレージ」(運営ナミキ)は、地元の縫製工場などと組んだオリジナルブランドの生産・販売に力を入れている。「地方の小規模な個店が生き残るため、大手企業の大量生産品とは一線を画したオリジナル商品、少量生産、一点物、オーダーメイドなどのよりパーソナルな対応に活路を見いだした」と並木徹也店長。

 ガレージ川越はナミキの本社がある埼玉県熊谷市から進出。当初は20代向けカジュアルを中心としていたが、時代とともにインポート、東京ブランドなど扱いブランドを変えていった。10年ほど前からオリジナルブランド「ガレージ・U・W」を本格化した。しかし、「ショップオリジナルを作っただけでは、有名ブランドを求める客には受け入れられない」ことは分かっていたので、安易にOEM(相手先ブランドによる生産)に丸投げせず、高品質な服づくりをする縫製工場探しから始めた。

 川越市やその周辺には小規模な縫製工場が点在しており、並木店長自身がその現場に通い続けることで信頼関係を築き上げていった。「初めは苦労したが、店頭での顧客の意見を反映しながら、自分のアイデアを具現化する作業は楽しい」と振り返る。

 デザイナーブランドも手掛けるパタンナーと連携し、地元の縫製工場と直接やり取りして作り上げている。カットソートップから始まり、アイテムを拡大した結果、現在では9割近くをオリジナルが占めるようになった。

 今秋冬も地元、川越市にある先染めの高密度織物によるコート生地を生産する老舗企業の生地を使ったコートを開発した。今回のトレンチコート(6万3000円)はネイビーからカーボンブラックに光の当たる角度によって色調が変化する高密度のギャバジンを使用し、ベルトレスでバックのロングプリーツベントが特徴だ。そのほか、テーラーに従事した縫製技術者と作り上げた一点物のツイードジャケット(4万3000円)などもある。生産現場とつながることでアフターケアでも強みを発揮でき、長く愛用してもらえるようサポート対応も整えている。

地元の老舗テキスタイルメーカーの生地を使ったトレンチコート

 今夏のコーヒー染めの協業では、熊谷の自家焙煎(ばいせん)のコーヒーが人気のホシカワカフェと埼玉県指定伝統工芸士で染色家の瀬藤貴史氏と取り組んだ。今回の協業からコーヒー染めTシャツの販売が関越自動車道の高坂サービスエリアのコーヒースタンドで決まるなど波及効果も出ている。並木店長は「オリジナルを通じて地元の物作りの強みを発信していきたい」としている。

ジョーゼットのカッタウェイシャツ

(繊研新聞本紙20年11月5日付)

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