《めてみみ》魅力を伝える力

2021/08/31 06:24 更新


 「逆にお叱りを受けることが増えてしまった」。ユナイテッドアローズの松崎善則社長が第1四半期の業績発表の場で語った言葉だ。緊急事態宣言下の店舗営業で、販売員は接客時にあまり長く話さないよう心がけていた。

 感染防止の観点から接客時間を短くした方が迷惑にならないだろうと考えたわけだが、来店した顧客から「以前より接客が薄くなった」と言われるようになった。「お客様が商品だけでなく当社の接客にも期待していることが分かった」

 同様の経験をしたセレクトショップはおそらく他にもあると思う。これが「ユニクロ」や「無印良品」なら、客が店員とやり取りするのは、目当ての商品の所在を聞く時くらいで済むだろう。

 セレクトの場合、事前に欲しい商品をチェックしてからの来店であったとしても、目当ての商品はSPA(製造小売業)と比べて安くはない。せっかく店に行くのだから、試着し、販売員の意見や助言も聞いて、納得した上で買いたい。そう思う客がこんな時期でも一定数存在するのは想像に難くない。

 必需品でなくファッションとしての服を売るには良い商品を仕入れるだけでなく、その魅力を伝えられる雄弁さも求められる。松崎社長はヒト(販売員)、モノ(商品)、ウツワ(店)の三つが自社の競争力の源泉だと改めて認識したそうだ。



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