「本当に欲しいものを吟味して買う傾向が強く見られた」「セール商材よりもプロパー商材を購入する率が高かった」「良いものがあれば正価品を買うという状況に変化」。7月に全館セールを実施したファッションビル・駅ビルから届いたコメントだ。
セールの集客力低下はこれまでも言われてきたが、今年はより顕著だったようだ。セールが来館するきっかけではあっても、値下げ品に焦点を当てて来館しているわけではないのだ。「欲しい物が安くなっていればラッキー」ぐらいの感じだろうか。セール、正価を問わず、ワンピースやサンダル、日傘や帽子などの「欲しい物」や「必要な物」は好調だった。
作り手・売り手が生産・在庫抑制や正価販売強化の方向にあることも正価品購入の比重を高めた一因かもしれない。一方、消費者側から見れば、行動制限のない久しぶりの夏に、少し財布のひもを緩めて非日常的な消費に動いた結果とも考えられる。
もっとも、限られた可処分所得を思うと、購入点数や頻度などどこかにしわ寄せがいく。「吟味して買う傾向」は続くだろう。「長い視点、深い視点で、服という暮らしの道具を使い、お客様と長くお付き合いしていきたい」。本紙7月28日付のECサイト運営のクラシコムの言葉だが、こんな物作りの考え方が求められている気がする。