経済産業省は7月14日、大阪服装縫製工業組合と面談し、縫製業が抱える主要な課題や取り組みについてヒアリングを実施した。同組合からはアパレル企業に対する工賃の適正化、インボイス制度が与える縫製業へのマイナスの影響について訴えたほか、現行の外国人技能実習制度に関する問題点を挙げ、縫製業の実態に即して同制度の見直し議論を進めるよう求めた。
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出席者は大阪服装縫製工業組合から井上美明理事長(アーバン社長)、只石英二事務局長、モデリアの平尾鉄兵社長、日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)の松尾憲久副理事長も加わった。経産省からは太田房江副大臣、細川洋一近畿経済産業局産業部長らが出席。司会進行は田上博道製造産業局生活製品課長が務めた。
井上理事長は、技能実習生に関わる違法行為(最低賃金や割り増し賃金などの不払い、違法な時間外労働など)に触れ、「違法行為がなくならないのは、はっきりいえば工賃が安すぎるからだ」と強調した。18年に運営が始まった適正加工賃算定システム「ACCT」の利用推進が呼びかけられてきたが、「改善が進んでいない」と指摘。「少なくとも見積もりをとってほしい」と訴え、「その上での価格交渉ならいいが、そのプロセスを経ていないまま違法行為があったのなら、我々はアパレル企業も違法行為に加担していると思わざるを得ない」と述べた。
只石事務局長は同制度について、縫製各社から挙がっている問題点を五つ説明。残業の上限時間延長や、裁断や二次加工、仕上げといった縫製業を取り巻く工程にも配慮した対象職種の撤廃あるいは緩和、実習生の入出国費用の企業負担について条件を設けることなどを求めた。
太田経済産業副大臣は「制度自体が形骸化してしまい、本末転倒の制度になっているのは明らか」と感想を述べた。コロナ下でマスクや防護ガウンの供給を支えた事例も踏まえ、「安全保障の観点でも日本の繊維産業の位置付けをきちっと議論しないといけない」とコメント。田上生活製品課長も「パンデミック(世界的な大流行)の際に、繊維産業の皆さんには助けていただいた。国内の物作りを残していくため、しっかり考えていきたい」と答えた。