ユーティリティースタイルが台頭
ボリュームトップにタイトボトムが基本
【ミラノ=小笠原拓郎】16~17年秋冬ミラノ・メンズコレクションは、ミリタリーをはじめとするユーティリティースタイルが広がった。ミリタリーパーカやMA-1などのアウターを大きなサイズにしたり、箔(はく)の光沢で仕立てたりといった手法が目立つ。
アレッサンドロ・ミケーレによるグッチは、秋冬もポエティックな気分をちりばめたショーをした。ショー会場は赤いじゅうたんと赤い壁で作られた空間。そこに現れるのは、ジャカードのコートにシノワズリのセットアップ、アニマルモチーフのニットキャップにスヌーピーのプリントTといった幅広いバリエーション。グッチらしいラグジュアリーな素材や刺繍をはじめとしたハンドテクニックを取り入れながら、可愛い少年のスタイルに仕上げていく。
インフォーマルなパジャマスーツにクマのジャカードのカーディガン、ポンポン飾りのニットキャップなど、どこか乙女チックな気分がにじみ出る。ボタン刺繍のブルゾンや背中にハチの刺繍をしたインパネス、クロシェニットのケープなどクラフトテクニックがさえる。その可愛い男性像はミケーレらしさと言えるのだが、可愛いだけにとどまってしまうと市場性は狭くなってしまう。ここにとどまらない新しい男性像をどう描けるか。そろそろミケーレにはそれが求められている。
ジル・サンダーは、ユニフォームを再定義した。カーキ、黒、ネービーを軸にしたスタイルはハーネスのようなパーツを巻いたストイックな雰囲気の漂うもの。スタンドカラーのコートはバックボタンで、そこにハーネスを巻きつける。シャープなスーツやコンビネゾンにも上からハーネスを重ねていく。MA-1のようなフライトジャケットを解体してニットと切り替える。セーターもショルダーパッチなどミリタリーディテールが特徴となる。シープスキンのレザーチュニックシャツはスタッズ飾りがアクセント。ジオメトリックなジャカードスーツは、シティーマップからイメージした柄だ。
マルニは量感のあるフォルムを生かしながら、いつもよりシンプルでクリーンなラインに収めた。ドロップショルダーのスーツやコートは、フロントをタブで留めるようなディテール。シャツもボリュームのあるシルエットで、深い前合わせで着たり、ベアバックで後ろを開けたり。シンプルなスーツにはビーバーファーを襟元で巻いて。パンツはスリムか裾をボタンで留められるボリュームタイプの両方がある。
ヌメロ・ヴェントゥーノはカーキやブラウンをベースにしたユーティリティースタイルを揃えた。アノラックやパーカは大きなパッチ&フラップポケットやテープをたたいたディテールが特徴。ウオッシュドサテンのジップブルゾン、レパードプリントのパーカやブルゾンで艶やか気分を取り入れる。モヘアレパードセーターやラムファーのショートコートなど毛足の長い素材も目立つ。
ニール・バレットは、リラックスしたトラックパンツとテーラードスタイルの両極。ジオメトリックな腕や身頃の切り替えで変化を作る。裾リブのトラックパンツにシアリングコートのバリエーションは機能的なスタイル。テーラードジャケットやブルゾンにはヘムから違うアイテムをのぞかせて、フェイクレイヤードのスタイルに仕上げる。コートやブルゾンの身頃にはイーグルのプリントがのせられた。
コスチューム・ナショナル・オムは、艶やかな光沢と色をダークカラーと組み合わせた。箔メタリックのパンツにベルベットタッチのバイカージャケット、スーツやコートにネオンターコイズの鮮やかな色をのせていく。ジャケットはやや厚みのあるパッドを入れたスクエアショルダーのシャープなライン。ラメジャカードのパンツやMA-1も。(写真=catwalking.com)