【鉱物系機能素材って何?①】体に働きかける

2020/06/13 06:27 更新


 世の中に様々な機能素材がある中で、注目を集めているのが鉱物系の機能素材だ。鉱物本来の性質を利用し、効率良く体を回復させたり、身体能力を引き出したりするという。アスリートやスポーツ愛好者の試合や日頃のトレーニング、休息用に使われている。昨今の働き方改革、休み方改革の潮流も背景に一般の生活者にとって日常生活での有用性も着目され、新しい商材の提案が目立ってきた。

〝受動〟から〝能動〟へ

 従来の機能素材と言えば、「汗が出たら、吸い取って拡散する」吸水拡散素材や、「体の動きに合わせて伸縮する」ストレッチ素材というように、人体の生理現象や動きに対して反応する〝受動的〟なものが主流。一方で、鉱物系の機能素材は体に働きかけて、体の生理現象や動きを〝能動的〟に引き起こすものだ。

 鉱物系機能素材が注目されるきっかけと言えるのが、09年に発売されたベネクス(神奈川県厚木市)のリカバリーウェア。ナノプラチナなど粒子状の鉱物を繊維に練り込んだ独自開発の特許素材「PHT」(プラチナハーモナイズドテクノロジー)を使った商品だ。鉱物が発する微弱な電磁波が「副交感神経の働きを高め、筋肉の緊張をほぐし、血流を促し、疲労回復や安眠へと導く」という。

リカバリーウェアの先駆けとなったベネクス

 疲労回復を目的とするウェアはそれまで、体を締め付ける時の着圧で物理的に疲労を軽減するコンプレッションウェアが主流だったが、締め付けずに効果を発揮するというベネクスの商品が市場で際立つ存在となった。発売当初、「運動中に着ないスポーツウエア」というキャッチーなフレーズも斬新だった。現在は百貨店やスポーツ専門店、自社ECで販売を伸ばしている。

人体の生理的反応を利用

 一方、運動など人のパフォーマンスを効率的に発揮する技術として訴求してきたのが、アドエルム(旧トリピュアジャパン、東京)。鉱物から抽出した様々な元素を調合したパウダーを繊維などの素材に加工し、その素材が皮膚や感覚器に刺激を与えた時の生理的反応を利用している。現在はバリエーションが増え、目的によって元素の組み合わせを変えている。快適な入眠用の「アド0」、リラックス用の「アド1」、パフォーマンスを上げる「アド2」「アド3」のカテゴリーに分類し、日常生活の様々な場面に適用させていく考えだ。

 アスリートの間で知名度が高まっているのは、サンラリーグループのサンフォード(岐阜市)が企画・製造・販売する「アクセフ」。アクセフはテイコク製薬社(大阪市)が数百種類の鉱物、水、温泉水を組み合わせて開発したミネラル溶出液「イフミック」を活用した〝ハイパフォーマンスギア〟として打ち出している。

 サンフォードはプロ野球界とつながりの深いGSL(埼玉県狭山市)を通じ、プロ野球選手へのアプローチを強めているほか、陸上競技、格闘家など様々なアスリートにも使ってもらい、宣伝効果を高めてきた。今後は同社もリラックスを目的としたウェアも揃える考えだ。

 これらの鉱物系機能素材は、その効果が目に見えにくく、感じ方には個人差があり、怪しさもある。このため、素材および製品のユーザーに対してエビデンス(根拠)を示すことができるかが重要になる。誇大広告や薬機法への抵触リスクがつきまとうからだ。各社は学術機関や検査機関などの協力を得て、客観的に機能を立証できるよう研究・分析を重ねている。

 次回からは主な鉱物系機能素材を紹介する。

(繊研新聞本紙20年4月16日付)



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