「テラックス」は東光商事グループでアパレル製造卸の東光リミーが開発した、放熱・遮熱機能と、温熱機能を備えた素材だ。テラヘルツの電磁波を発する人工の鉱石を用いたもので、同社はテラックスを加工した生地や、その生地を使ったアパレルを開発している。
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主成分は金属シリコン
テラックスに使われている〝テラヘルツ人工鉱石〟は、酸素とケイ素が結合したケイ石を還元して得られる金属ケイ素(金属シリコン)を主成分とする。放熱・遮熱タイプの「テラックスクール」には放熱性を備えた金属など数種類の鉱石をブレンドし、温熱タイプの「テラックスホット」には蓄熱性を備えたセラミックなどの鉱石をブレンドしている。放熱性を持つ人工鉱石の場合、塗料に加工されて水冷・空冷用設備などに活用されているという。
東光リミーは、テラヘルツ人工鉱石の特性をアパレルなど繊維製品分野で活用するため、独自に技術開発に取り組んだ。これにより、テラヘルツ人工鉱石をミクロレベルに粉末化し、その粉末を特殊な溶剤と塗料に混ぜて生地への加工ができるようになった。いずれも天然繊維から合繊まで加工対象を選ばない。
テラックスクールは加工面を衣服の外側にし、体の熱エネルギーを衣服外に素早く放出する仕組み。外へ放射されるテラヘルツ電磁波は太陽光による熱エネルギーを遮り、衣服内の温度上昇を抑えるという。テラックスホットは加工面を衣服の内側にし、体の熱エネルギーを遠赤外線電磁波のエネルギーで増幅して衣服内の温度を上昇させ、体を温めるという仕組みだ。
一般医療機器も販売
国内では主に製品としての販売が主力。いずれのタイプもスポーツやワーキング、メンズを中心とするアパレル用途で販売実績を増やしている。とりわけ、テラックスクールは冷却効果の高さが熱中症対策として注目され、昨夏にはテラックスクールを使ったゴルフウェアがヒットしたという。
テラックスホットと同様の温熱性を備え、一般医療機器としても認められた製品ブランド「テラックスケアテクト」の販売も本格化している。インナーウェア(8000円)やサポーター、フェイスマスク、グローブなどのグッズ(3800~6000円)を揃える。
同社は「遠赤外線電磁波エネルギーによる血行促進、疲労回復、筋肉痛や神経痛の緩和、胃腸の働きの活発化」をうたっている。効果測定結果によると、未加工品と比較して遠赤外線放射率が9.8%高かった。これは、遠赤外線協会の基準となる「平均5%以上」をクリア。現在、整骨院や治療院などで販売されている。このほか、スポーツクラブや百貨店、雑貨チェーン店、ドラッグストアなどの販路も狙う。
海外市場の開拓にも力を入れている。その一環で1月末にスポーツ用品見本市ISPOに初出展した。スポーツ・アウトドア分野だけでなく、ヘルスケア関連の企業からも引き合いが多く、手応えを得た。主に生地の販売で商機を広げる考え。拡販を見据え、日本と中国では量産体制を整えているほか、ASEAN(東南アジア諸国連合)は「いつでも対応可能」という。5年後売上高100億円(卸ベース)を目指す。
(繊研新聞本紙20年4月28日付)