ブランドのイメージを損なわないリユースショップを作りたかった――ブランド古着店「リンカン」を運営する未来ガ驚喜研究所(齋藤賢吾社長)は3月上旬、東京・渋谷の神南にデザイナーブランドの古着を集積した新業態「アーカイブストア」をオープンした。立地選定や空間演出を重視すると同時に扱う商品も厳選し、これまでにないリユースショップとして業界関係者や外国人観光客から注目を集めている。
(友森克樹)
「私は必死にクリエイションを続けるデザイナーに対するリスペクトの気持ちがある。リンカンもそうだが、これまでのリユースショップは扱うブランドのイメージを壊してしまうことにフラストレーションがあった」と話す齋藤社長。長年ブランド古着を買い取るなか、「1000着に1着くらいの頻度で異彩を放つ希少な商品が出てくるが、既存の店で販売してしまっては違和感がある」としてストックし続けてきた。
これらの服を販売するために新業態の開発に着手。商品は揃っていたが、「物件や内装、ブランディングなど、構想から出店までに2、3年かかってしまった」という。
立地はリンカン渋谷店の脇の階段を降りたところにある。薄暗く、廃墟のような雰囲気にしており、「この先に何があるのだろう」という高揚感をかき立てる。
こうしてたどり着いた店内には、「マルタン・マルジェラ」「コムデギャルソン」「ラフ・シモンズ」「ヨウジヤマモト」「ヘルムートラング」などのブランドを中心に、90年代後半~00年代前半ごろの古着を陳列している。この年代を揃えるのは、「今勢いのある若手のデザイナーたちがファッションを目指すきっかけになったアイテムで集積して展示・販売することが服飾業界にとって意義がある」と考えるからだ。商品の価格帯は数万~200万円程度。
店内には鏡張りの空間も設け、期間限定で特定のブランドを豊富に集積する企画展スペースとしている。14日からはコムデギャルソンの企画展を実施する。
オープンから約1カ月が経つが、ファッションデザイナーなどの業界関係者から好評を得ている。服飾系専門学生の来店も多く、服のパターンや縫製を実際に見て学んでいるという。来店客が投稿したであろうインスタグラムの動画配信などを見て来店する外国人客も多い。来店客の9割近くが「リンカンを知らない人で、新規客の開拓につながっている」。
「もうけられるかどうかを基準に考えると、新しいアイデアが生まれない」との考えから、初年度の売り上げ目標は設けていない。同業態でのネット販売もせず、多店舗化する計画もない。「購入せずとも、商品を見るだけでも面白い空間に仕上がった。今後もリユースショップだがらこそできるわくわく感を提案し続けていきたい」という。