MDが使う「算数」をショップ運営に役立てよう!《第3講》⑩(佐藤正臣)

2023/03/08 06:00 更新


(第1項)ショップを運営する上で知っておく利益とは?

3.売価・原価・値入・粗利益を理解する④

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前回の講義で、ロスは実地棚卸時に判明することをお伝えしました。



はい、前回の講義でロス原価高は判明したのですが、「ロス率はどのように計算するのですか?」という質問で、講義が終了しました。



そうでしたね。前回の講義でも使用した例題をもう一度お伝えします。

“バイヤーBさんが1点1,000円の売価、仕入原価400円で仕入れたバッグが1カ月で1000個、100万円売れた。しかし1カ月後、棚卸を実施したらバッグが100点なくなっていることが判明した。その月の期首在庫は1500点。1カ月の営業中に入荷してきたバッグが500点でした。”

バッグのロス数が100点でしたから、400円(バッグの1点の原価)×100点(ロスしたバッグの数量)=4万円(ロス原価)ここまでお伝えしました。

では、Tさんに問題です。今回の例題の粗利率は何%ですか?



はい。すぐに計算します!

………(計算中)…………

60万円(粗利高)÷売上100万円=60%(粗利率)です!



正解!と言いたいところなのですが、これはロスがなかった場合の粗利(高・率)になります。



せんせ!私、わかります!

今回のケースでは、バッグが100点。原価高で4万円分、何らかの要因でバッグがロスしています。これは、せんせが前回仰られていたように、要因は盗難やショップ要因で商品が売り物としては、成立しなくなったことかもしれません。見方を変えると、「0円で売れた!」という解釈が出来ます。



0円で売れた…?そうか、盗難されたケースだと、盗難した人は「0円で買った!(盗難は良くないことだけど)」とみなすことができるということですか?



その通りです。ロス分は売れていないけど、0円で売れたので売上原価に加えなければならないということになります。

Tさん、売上100万円で荒利高60万円、売上原価40万円という数字は、ロスがなかった場合の数字ですが、ロス原価分4万円を売上原価に計上すると、粗利益はどうなりますか?



売上原価が44万円になりますから、100万円(売上)-44万円(ロスをプラスした売上原価)=56万円(ロス後の粗利益高)

56万円が粗利益です!



ブラボー!正解です!

今回のケースを表した図が以下の図になります。Tさん、この図を見てロス率の計算をしてみてください。 



はい!ロス高4万円分を売上原価40万円に加えたら、粗利率が4%減ったので、ロス原価高4万円÷売上100万円=4%(ロス率)

4%です!



正解です!

この図を見ると理解できますが、ロス原価を売上原価に計上することは、言い換えれば、ロス前の荒利益高からロス原価分をマイナスしたのが、本当の粗利益高になります。ロスが大きければ、その分粗利益が減り、組織に損害を与えるということが、理解出来ますね。

因みに今回は、ロス前を荒利、ロス後を粗利として、漢字を別にして表現しています!過去の連載に詳しく書かれていますので、興味のある方は、そちらをご覧ください。



はい。わかりました。



Dさん、ロスの詳しい説明ありがとうございます。

実際、ロス率が4%などという組織は、アパレル・ファッション小売業には存在しないはずですが、ロスが大きくなるほど、組織に損害を与えるということは、ご理解頂けたと思います。



はい、良く理解出来ました。ありがとうございますm(__)m



それでは、Tさんに問題です!

アパレル・ファッション小売業あるあるの一つとして、「ロス率は店長にくっついてくる!」と言われています。それは、何故でしょうか?



(ロスが大きくなる要因を考えると、ショップ要因のロスが多いということだから……)

ロス率が高い店長のショップは、ショップのバックヤードが汚い!整理整頓が出来ておらず、ショップ要因のロスが多いから、ロス率が高い!でしょうか?



その通りです!

実は、私の会社でショップごとのロス率を公開したのは、店長にロスを削減することの重要性を意識してほしいからです。

店長が目先の売上ばかりに捉われて、商品の整理整頓を後回しにすることで、バックヤードの整理整頓がなされない。そして、ショップ要因のB品が増えます。これが積もり重なれば、ロス率が増大し組織に損害を与えます。だからこそ、弊社ではロス率を店長のKPI(重要業績評価指標)として活用しています。

実は、Tさんを店長に推薦したのも、仕事の整理整頓がしっかりとしているという評価をしていたからです。



Dさん、ありがとうございます!



Dさん、素晴らしいです!

例えば、1カ月の売上が1億円の組織の場合、ロスを0.2%改善すると20万円粗利益が増えます。この組織の粗利率が50%だった場合は、1か月で40万円の売上を増やしたことと、損益上は同等の効果がありますから、日々の整理整頓は本当に大事なことなのです。

また、バックヤードが狭くショップスタッフが利用しにくい作りになっていることも、バックヤードの整理整頓に影響を与えますので、本部の責任も重大だと言えます。会社全体でロスを削減する!という意識を持ってほしいですね!



はい!日々の整理整頓を頑張ります!



ということで、今回も字数制限が来てしまいました。次回は、より粗利益のことをショップの業務と結び付けた話を進めていきます!



では、皆さん。次回もお楽しみに(@^^)/~~~

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佐藤正臣 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp



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