数字は人の目にとまる。そして、人の興味をそそる。
このコラムをはじめた頃も、編集長からいただいた読まれるコラムのアドバイスに、タイトルに数字を入れるというものがあった。
昔から、雑誌の冒頭に掲載されるニューストピックのような欄で、「200人」とか「52時間」などといった具合に、ドーンと大きな数字がタイトルになったものをよく目にする。すると、「え、この数字なに?」と、まんまとその記事を読み始めている。
いつだか読んだ、様々な動物の睡眠時間についてのその手の記事が忘れられない。「へー、猫って14時間寝るんだあ」「羊って3時間しか寝ないの?」と、楽しませていただいた。
2月20日から始まったロンドン・コレクション(ロンドン・ファッション・ウイーク、LFW)に先駆け、主催者の英国ファッション協会(BFC)から、LFW及び英国ファッション産業の現状を報告するリリースが出された。
ここ最近のBFCのリリースは楽しい。なぜって、文章は冒頭にいたって簡潔に、残りは「数字でみるロンドン・ファッション・ウイーク」となっているのだ。460億ポンド(英国ファッション産業規模)や79万7000人(英国ファッション業界就業人口)といった経済データに加え、「5376袋(LFW会場で無料配布されたポップコーンの数)」といった数字がランダムに掲載されている。
そう、アメリカンエクスプレスはタブレットを持った案内係を提供しているし、VIPプレスにはメルセデス・ベンツによるハイヤーサービスがある。そんな様々な企業による協賛や、ツィッターやインスタグラムでの露出状況などイベントの横顔が数字とともに見えてくる。
アメリカンエクスプレスによる会場案内係は20人。コートはオスマン、帽子はクリスティーズ・ロンドンのもの
というわけで、説明はこのくらいにして・・・
「数字で見るロンドン・ファッション・ウイーク」をぜひともご覧下され。できる限り忠実に訳したので、メーン会場内で起こっていることの数字にはシーズンが明記されていないが、実績は9月の15年春夏コレクション、予定は今回の15〜16年秋冬コレクションと判断して間違いなさそうだ。
●460億ポンド 英国ファッション産業の経済効果(間接的なものを含む)
●260億ポンド 英国ファッション産業の直接的経済効果(2009年の210億ポンドから上昇)
●107億ポンド 英国内におけるファッションオンライン売上(2019年までに190億ポンドに達することを予測)
●1億6000万ポンド LFWの各シーズンのメディア報道対価
●1億ポンド LFW期間中のシーズン毎受注総額
●79万7000人 英国ファッション産業における就業人数
●32万9800タグ 15年春夏LFWにおけるツイッターでの#LFW数
●12万枚 15年春夏LFWにおけるインスタグラムで#LFWとタグづけされた写真の数
●3万2000マイル メルセデス・ベンツの公式ハイヤーによるショー会場移動のための総走行距離
●3万杯 15年春夏LFWで消費されたラバッツァのエスプレッソの数。コーヒー豆にして200kg
●2万5000本 15年春夏LFWにおいて飲まれたフィジーウォーターのボトル数。
●1万6862マイル DHLのスポンサーにより、ハウス・オブ・ホランドとH・バイ・ハカーン・イルディリムのコレクションがそれぞれロンドンから東京、トルコからロンドンへと運ばれた距離
●1万時間 昨年BFCの主導者たちがLFW参加デザイナーの指導教育に費やした時間
●5376袋 LFW会場で無料配布されたポップコーンの数
●5000人 LFWに来場予定のバイヤー、ジャーナリスト、ブロガー、映像クルー、カメラマン数
●5000杯 スカーヴィ&ライ(スパークリングワイン)が提供された数
●3000冊 ESデラックス誌(イブニングスタンダード紙の付録冊子のLFWスペシャル版)の配布数
●200人 メイベリンのラウンジでメーキャップサービスを受けた人
●196カ国 15年春夏LFWのライブストリーミングが見られた国
●190ブランド デザイナーショールーム(LFW展示会場)の参加デザイナー数(英国及び海外、新人及びベテラン、ウエア及びアクセサリーを含む)
●150人 メイ・フェア・ホテル(LFW公式ホテル)に泊まったジャーナリスト及びバイヤー
●94% ツイッターのユーザーによるLFWの認知度
●74% ツイッターのユーザーによるLFWへの興味度
●80個 ペンハリガンのキャンドルが灯された数
●80ブランド 15〜16年秋冬LFWでショーを行うデザイナー数(キャットウォーク55、プレゼンテーション23)
●78% LFWの来場者で会期中にツイートする人
●70% 英国におけるインターネットユーザーが衣料品及び靴をオンラインで買う割合
●61カ国 LFW来場者の国数
●52個 サイトで見る事ができるスウォッチの限定品数
●51秒 BFCコートヤードショースペース(メーンショー会場)のキャットウォークで1ルックのモデルが歩く時間
●35人 サマーセットハウス(LFWメーン会場)にあるトニ&ガイのブローバーで1日に受ける予約数
●20人 オスマンがデザインしたユニフォームを着たアメリアンエクスプレスによる会場案内係の数
●20人 トリンプによってシェープウエアかシームレスランジェリーをプレゼントされたデザイナーの数
●10着 ebay.co.uk/BFCで購入可能なイーベイとBFCのコラボアイテム(すべて100ポンド以下)の数
●9台 オーシャン・アウトドアとの提携により、ハンター・オリジナルのショーが、ロンドン、マンチェスター、バーミンガム、グラスゴーでライブストリーミングする巨大屋外スクリーンの数
●1カ所 クリストファー・レイバーンによってデザインされたラバッツァ・エアストリーム・カフェの数
以上。
原文はBFCのサイトからダウンロードできる。他にも、12月の英国ファッションアワード当日に出されたリリースも楽しい。当日セレモニー会場で配られたダイエットコークは1400本、ポップコーンは1750袋。
メーン会場で1人モデルがキャットウォークを歩く時間は51秒。写真はダックスのショー
あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員