カギになるのはモバイル
コールズデパートメントストアーズのデジタルテクノロジー部門のラトナカー・ラブ執行副社長は、「ミレニアルズは非常に豊富な情報をもっていて、セルフサービス、セルフラーニング、セルフチェックアウトを好む。店の中でデジタルを使って、こうした経験を提供することがより重要になる」と語った。他のセッションでも、「より多くの人がセルフサービスを好むようになっていて、69%の人が販売員と話をしないですむ方がいいと答えている」という話が出た。そうした状況の中、特に重要視されているテクノロジーはモバイルだ。
客の気を引く
コールズのラブ執行副社長は以前、メーシーズ・ドット・コムとブルーミングデールズ・ドット・コムでオムニチャネル経験をつくる仕事をしていた。同執行副社長は、「店内でのモバイル経験を通じて客の気を引くこと、客に役立つためにより多くの知識をもつこと、販売員をどうサポートしたらいいかということに焦点を当てている」と語った。
「アンテイラー」「ドレスバーン」「ジャスティス」などウイメンズウエアと子供服の専門店チェーンを傘下にもつアセナ・リテール・グループのストアテクノロジー部門ディレクターのスコット・ハッテン氏は、「モバイルで顧客とのかかわりがもてる。モバイルが客と販売員の間のバリアをなくす」と強調した。販売員にはiPadを持たせているが、ハッテン氏は、「簡単に使えてパーソナライズでき、自分の所有物であると思えることが重要」と指摘。ハッテン氏はまた、企業モバイル管理大手の「エアウォッチ」を「主要パートナー」に挙げた。
好きを先取り
スティーブ・マデンのマーク・フリードマン社長は、「POS(販売時点情報管理)システムを強化し、モバイルアプリとロイヤルティープログラムなど、一貫性があってクリエーティブな遂行に焦点を当てている」と語った。同社長は「客との交流を逐一継続的に追うことで、購入率が非常に上がり、客が常に戻ってくる」とも話した。
ただ、店内で使われるモバイルがどれもうまくいっているとは限らない。ビーコン(存在や位置を伝えるために光や電波、信号などを発信する装置)に関しては、「需要が急速に伸び、その後急速に下がった。投資効果を得ることが難しいからだ」という話が聞かれた。セフォラのサビオ・サッティルCIO(最高情報責任者)も、「ビーコンやWi‐Fiなどいろいろ試したが、店で客が何をしたいのか、まだ分かっていない。分かるようになるまでにあと2年くらいかかるのではないか」と語った。
それでもサッティルCIOは、「いずれビーコンを活用して客が店に入ってきたときにその客のことを十分分かっているようになり、いつの日か、客が何を欲しいのか、客よりも分かっているようにしたい」と話した。客が好きそうなものを先取りして提案できたら、それは大変な強みになるだろう。
いずれにしても、どこにいても買いたいときに買えることが当たり前になりつつある。ディズニー・コンシューマー・プロダクツでは、オンラインの売り上げの4分の1はモバイルからもたらされているという。アンダーアーマーの創業者のケビン・プランク会長兼CEO(最高経営責任者)も、「売上高の12%がモバイルから得られている。当面減ることはないだろう」と語った。買い物用のモバイルアプリも、ますます進化するに違いない。(ニューヨーク=杉本佳子通信員、写真=全米小売業協会提供)