「全ての人が人生を謳歌(おうか)できるように」。こうした思いを込めたインナーブランド「オウカ」(大阪市、田村優季代表)。障害がある、肌トラブルがあるなど、様々な悩みを抱えていても楽しめる。インクルーシブがコンセプトのブランドが、障害のあるなしにかかわらず、受け入れられている。
(壁田知佳子)
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オウカは4月、関東の百貨店で初めての期間限定店を高島屋横浜店で開いた。高島屋のチラシに掲載されたこともあり、興味関心を持つ客が連日、売り場を訪れた。自身の肌の悩みや、障害を持つ家族や友人のことを語りながら、ブランドの背景や商品の詳細を熱心に聞く姿が店頭で見られた。同店のバイヤーの西山由里子さんは、「『誰かの生きづらさや不便からみんなの価値が生まれる』という強いメッセージ性」にひかれたことに加え、「全社で推進するサステイナブル活動『ツナグアクション』にも合致する」として、ツナグアクションの強化期間に合わせ、期間限定店の出店を依頼した。
高島屋横浜店で好評だったのが、昨年の11月に仕上がったばかりというソフトブラ。甘撚りの糸で編んだ柔らかく良く伸びる生地を使い、肌側は縫い目を極力控えて縫製した。ブルーべリーを「ボタニカルダイ」で染めたブルーが品薄になるほど人気だった。そのほか、食い込みの少ないショーツ、前後どちらでも着られるタンクトップやキャミソール、靴下の「ミナモ」なども紹介した。「通院時に使いたい、当たりのない締め付けの少ないブラを探していた、というお客様が購入してくれた」(田村さん)。「障害のある家族や友人に教えたいと言って、カタログを持ち帰る人も多かった」という。
靴下のミナモもインクルーシブなコンセプトに基づいて作ったもの。左右も表裏もなく、はく角度も、サイズもフリー。ずぼらな人も、目が見えない人も、男性も、女性も、誰もがはきやすい靴下だ。販売方法もユニークで、靴下は2本が対になって完成すると無意識に思い込んでいるが、片方をなくしてしまったことをマイナスととらえないよう、3本や5本という奇数で販売している。追加購入は1本から可能だ。
一般社団法人を設立
「皆が自分らしく心地良く」掲げて
インクルーシブファッションを通して、誰もが自由にファッションを楽しめる世界へ――こうした理念を掲げて4月、田村さんとLUYL(ライル)代表の布施田祥子さん、アラドナ代表の加藤千晶さんが共同代表理事を務める一般社団法人NiCHIが立ち上がった。
自身や身内、親友が障害を持っているなど、様々なきっかけで物作りを始め、ブランドを築いてきた3人。インクルーシブファッションをテーマに「みんなが自分らしく心地良く生きられる世界をつくろう!」とチームとなり、スタートした。インクルーシブデザインの商品・サービスの企画・製造・販売、コンサルティング、講演会や県風会、イベントの企画・運営などを行っていく。