女性によるEC「アワーホーム」 等身大の商品やコラムに支持

2020/09/07 11:00 更新


 商品の背景を伝えるストーリーコマースが増加するなかで、オリジナル商品の販売だけにこだわり成長しているECがある。アイブリッジ(兵庫県西宮市)が運営する「OURHOME」(アワーホーム)だ。主宰の田辺絵美さんをはじめとした女性スタッフによる等身大の商品企画やコラムが共感を生み、都市部の30~50代の女性を中心に支持が広がっている。売り上げは15年の創業から8倍、今期(21年2月期)も前期比50%増以上を見込む。「お客さんを裏切りたくない」という思いが真摯(しんし)な企業姿勢につながり、熱のこもった手紙が全国から寄せられている。

(金谷早紀子)

 絵美さんは大手通販会社の出身。収納用品の企画担当として働きながら、08年から趣味でインテリアブログ「アワーホーム」を発信していた。当時、20代でインテリア収納をテーマにしたブロガーは珍しく、テレビ番組や雑誌に取り上げられ認知が広がる。仕事にするつもりは全く無かったが、双子を出産してから仕事と育児の両立に悩み、働き方を変えたいと整理収納アドバイザーとして12年に独立した。

ロングセール中心

 著書の出版や商品プロデュースなど活動の幅が広がるなか、知り合いから依頼されて作った革のショルダーバッグがECで1分で100個を完売。受注生産のため3カ月後の納品になっても購入を希望するファンの熱意を実感し、「この思いにちゃんと応えなければ」とオリジナル商品の企画販売を決めた。

 現在はECの売り上げが全体の8、9割を占める。収納家具や服飾雑貨など約80点を販売。国産ひのきのオープンボックス(1万3500円)や革のバケツバッグ(1万8900円)など初期から販売し続けているロングセール商品がほとんどだ。客単価は約1万円で、リピーター比率も高い。商品構成は考えず、「自分たちが欲しいものを、納得できる商品ができた時点で販売」し、物作りに込めた思いを、工場での生産場面や使用感の動画も交えて多面的に伝える。ECの編集やデザイン、撮影、客への告知に到るまで、全て自社で手がける。

革のバケツバッグ
国産ひのきのオープンボックス
生産現場の写真や使用感の動画も交えて商品の魅力を伝える

コラムは毎日発信

 スタッフはほとんどが子供を持つママで、コラムは平日は毎日発信。暮らしにまつわるコラムには、「帰省をあきらめた夏、わが家が挑戦したこと」など身近なテーマが並ぶ。サイトの月間アクセス数は約280万PVで、メールマガジンの登録者数は2万5000人。サイトやSNSを毎日チェックする人が67%を占めるなど、濃いファンによって支えられている。絵美さんも「昔からのお客さんは、私が訪問して整理収納をレッスンしていた方。顔も住まいも知っている方たちを絶対に裏切ることはできないという思いが原点にある」と力強く話す。

 子育てしながら無理なく働ける職場作りも大事にしている。夫の良平社長と創業時に約束したのが、土日は必ず休み、午後5時15分には会社を出て、PTAにも参加できる会社にすること。オフィス近くにある実店舗も、平日の午前10時~午後2時しか営業していない。赤ちゃんを連れての出勤が可能だったり、子連れで参加できる社員研修だったりと、家族ぐるみのコミュニケーションも活発だ。「暮らしを提案していながら、自分の家がおざなりでは良いものが届けられない」と、プライベートの充実にも気を配る。

 来年には、現在の場所に加え、ショップ、レッスンスタジオ、オフィスが一つになった新たな拠点を建設予定だ。イベントを充実させるなど、「買い物の楽しみが感じられる場所にできれば」という。現在は育児にまつわるテーマが多いが、スタッフと顧客のライフステージの変化に合わせて「介護にまつわる商品なども手掛けていけたら」と先を見据える。

スタッフはほとんどが子を持つママ(前列左から2番目が田辺良平社長、3番目が主宰の田辺絵美取締役)


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