スマイルズ(東京)が運営するセレクトリサイクルショップ「パスザバトン」はこのほど、東京でのみの市「パスザバトン・マーケット」を初めて開いた。アパレルや雑貨、陶器など21企業・ブランドが参加。各企業の倉庫に眠っているデッドストックや規格外品などに光を当て、パスザバトンなりの見立てで紹介した。今後も年に1回のペースで開催したい考えで「日本、世界中に眠っている資産を掘り起こしたい」(野崎亙パスザバトン事業部事業部長)ともくろむ。
(佐々木遥)
倉庫を空っぽに
会場はもともと骨董(こっとう)通りとして栄え、今も骨董店が残る京橋にあるTODA BUILDING。これまでもパスザバトンの店舗では展示やワークショップなどのイベントを積極的に開いてきたが、限られたスペースでは回数に限界があり、「まとめて紹介できるイベントをやりたかった」という。
のみの市というと一般的に個人のコレクションを出品するイメージが強いが、パスザバトン・マーケットでは企業のデッドストックなどに注目した。日本には60~80年代の高度経済成長期に大量生産された物が「取り残されて」おり、今見ると「そのままでも十分に新鮮な物がいっぱいある」。そうした物を掘り起こし、「日本の倉庫を空っぽにしたい」という。
イメージ壊さず
靴下の「アヤメ」が持ってきたのは、工場が配色などを間違えた商品。「デザイナー的にはNGだけど、品質的にはOK」なメンズとレディスの靴下を500円で販売した。ほかに、前のコレクションのアイテムも出品。「丈は毎シーズン微妙に変えていて、ちょっと古くなってしまったものを持ってきた」。アヤメは現在、アトリエの一角で週3日だけショップを開いていて「実際のユーザーのレスポンスが面白い」こともあり、参加を決めたという。
靴メーカーのムーンスターは、ここ5年ほどのメンズ・レディスのスニーカーのデッドストックを並べた。通常、セールはしないため「どうしても残ってしまう物がある」という。「まずは履いてもらわないと履き心地を分かってもらえない」と、正価の約半額で販売。こうしたイベントであれば「ブランドイメージを壊すことなく販売できる」とし、「まずはお得感で買ってもらって、次につなげられたら」と期待する。
米富繊維のオリジナルニットブランド「コーヘン」は、アーカイブとして取っておいた代表的なアイテムのサンプルやデッドストック、残反で作ったバッグを出品した。そのほか、糸も1本まるごと2000~5000円で販売。以前使用したものの余りや開発段階でNGになった糸を持ってきた。
思いのオークションも
会場では「思いのオークション」も開催。ラジオパーソナリティーのクリス智子さんや建築家の永山祐子さんなど著名人が出品した愛用品を、思いに共感して大切に使ってくれる人に譲るという取り組みで、購入希望者は思いをしたためた紙を会場に設置されたポストに投函(とうかん)した。「これからの価値を測る物差しはお金だけではない。仮に同じ金額だったら、思いが強い人に譲りたい」と野崎さん。
同イベントは今回をトライアルとし、今後は「もっと規模を大きくしてやっていきたい」という。
◆一期一会の価値伝える
パスザバトン事業部事業部長・野崎亙さんの話
今、CtoC(消費者間取引)ののみの市はたくさんあるけれど、B(企業)の方がよっぽど物はある。それらをアウトレットとは違った形で、リライトして見せられないかと考えました。時代感やタイミング、出しどころが大事であって、物に罪はないので。パスザバトンは、物にすごく執着があります。
イメージしたのは、のみの市とセレクトショップの中間。アウトレットは、ある種お得感で人が集まってきますが、パスザバトン・マーケットでは「見たことあるようだけど見たことない」とか「ここでしか買えない」という一期一会の価値を伝えたいと思いました。