サマンサタバサジャパンリミテッド門田社長 EC、商品改革で攻めの経営へ

2020/10/10 06:29 更新


【パーソン】サマンサタバサジャパンリミテッド社長 門田剛さん EC、商品改革で攻めの経営へ

 サマンサタバサジャパンリミテッドは今年、コナカの傘下に入り、7月にはコナカグループの服飾雑貨セレクトショップのフィットハウスを吸収合併した。この間、進めてきた企業のスリム化も徐々に進展し、秋にはECシステムを整備し、来春には商品改革をはじめ、攻めの経営に力を入れていく。

独特のDNAさらに進化

 ――コロナ禍の市場や会社の状況は。

 3~5月は店舗を閉鎖するなど新型コロナウイルス感染の影響が大きく出た時期でしたが、何とか乗り切ったという思いです。昨秋は消費増税などでダウントレンドで、メインブランドの「サマンサタバサ」を見直して面舵(かじ)を切りすぎた面もあって厳しかったのですが、本来のブランドの中身を進化させる内容で調整した結果、年明けの1月から2月にかけては売り上げは悪くありませんでした。この間リブランディングを進めてきましたが、特にサマンサタバサと「サマンサベガ」のすみ分けに力を入れ、ベガの方からうまく進み、タバサも良くなってきたと思います。リブランディングはうまくいっていると思っています。

 しかし、コロナ禍が大きく響いて、店舗が再開しても厳しいと見て、年末までには通常の7掛け程度に回復できればとみていました。しかし、7月には思った以上に回復し、7月は既存店で76%で想定以上に戻ってきた。でも7月の4連休以降、感染者の拡大で売り上げは鈍くなっています。ただ、定番的なものなど売れるものは売れていますし、地域的には例えば、大阪の都心部は厳しいですが、神戸は非常にいいんです。大阪まで出ていた人が神戸で済ませるなど、買いやすいところで買っています。

 ――ECの状況は。

 ECはコロナ流行前は全体売り上げの13%でした。コロナ禍に入って落ちましたが、だいぶ戻ってきました。バッグ、小物だと13%でまだまだだと思っています。30%になっても不思議ではありません。年内にECシステムを変えます。現状のECだとリーチしにくいのでそれを改善し、スムーズで正確な商品供給にしようというものです。ここ数年システム関係の投資は行っていなかったのですが、今回、億単位のかなり大きな投資になります。今、社内のデータであったり、物流であったり、デリバリーもそうですが、不十分なところがあるので、今のうちに足腰をしっかりさせておこうと8月にオペレーション事業本部を置き、専任の役員を付けました。今までの蓄積された問題点を一つずつ解消しながらの作業なので短期間で終えることはできませんが、年末にはかなりすっきりした仕組みになると思います。

 ――店頭の方は。

 ECも大事ですが、お店も大事です。最近、ディベロッパーや店舗を回って改めて感じたんですが、当社の場合、お店のスタッフに独特な文化があるんです。サマンサのDNAがあるんですね。今年は(コロナ流行で)新人研修ができなかったのですが、そのDNAを十分伝えるために何とか感染に気を付けながら研修ができないかと思っています。私もいろいろ会社を変わりまして、サマンサが10社目なんです。その中でショップスタッフのレベルは断トツの高さだと思います。特にお店での明るさ、元気さ、あいさつとか基本的な部分については特に高水準です。ずっと以前から研修とか、日ごろの教育などで蓄積されたスキルだと思うのですが、ブランドに対する思い入れ、忠誠心をとても備えているんです。このDNAは一朝一夕ではできないですから、生かさない手はありません。ブランドを好きになってこそ仕事ができますし、お店もポジティブな空気感を出してこそブランドの魅力が伝わると思います。このDNAをしっかり保持して販売に力を入れていきたいと思います。

リブランディングが進む「サマンサタバサ」

スタッフ起用で新鮮さ加える

 ――この間、企業のスリム化、整理を進めてきた。

 不採算店舗の整理は大方、進めることができました。今後はまとまった店舗整理はないと思います。在庫についてはもう少し抑えたいと思いますが、だいぶ進んできました。先ほど言いましたが、リブランディングもうまくいっているので、さらに整理を進めていきたいと思います。アパレル事業のバーンデストローズはすでに良くなっていて順調です。4ブランドとも良くなっており、特に「レディアゼル」は絶好調です。(コロナ禍での)営業再開後も戻りが早く、前年超えで推移しています。バッグよりもアパレルの方が悪くなりやすいですが、復調も早いですね。出店に関する引き合いも多くなっています。いい条件で出店できる可能性も高くなっており、チャンスと見て積極的に考えていきたいと思います。

 ――フィットハウスとの合併については。

 合併して企業内にフィットハウスカンパニーを設けました。合併は1年前から構想があって進めてきたんですが、同じ小売店でもタイプが異なります。フィットハウスは東海エリアが中心で、郊外型立地に出しており、セレクトショップ形態です。サマンサはSPA(製造小売業)です。財務体質もサマンサは自己資本比率が低いですが、フィットハウスはその逆。ブランドの知名度も差がある。フィットハウスは地域限定型で、サマンサは全国展開ですが、都心部に集中しているため、コロナの影響も大きく出ています。一方、フィットハウスは路面店が中心で、6月以降は前年を上回る売り上げです。そんな違いを踏まえた上で合併の相乗効果を出していきたいと考えています。

 フィットハウスでは先月まで合併記念セールを行いましたが、サマンサのキャリー在庫を導入して販売しました。サマンサの(郊外型SCで展開する)「&シュエット」はエリアが重なる場合がありますが、例えば、イーアスつくばのフィットハウスの中に&シュエットを組み入れて売り場を設け、店舗を集約しました。ただ、こうした対応は部分的ですね。フィットハウスは仕入れが中心で粗利が低いんです。今後、フィットハウスのPB開発にサマンサのプラットフォームを活用して粗利向上にも寄与していきたいです。今はサマンサからの商品供給や開発での協力ということで連携しており、基本的には(ブランドミックス戦略はとらず)それぞれの事業を別々に進め、ECなどのシステムも別立てでやっていきます。

 ――今後の課題は。

 まずは来春夏に向けて商品改革をもっと進めていきたい。今秋冬でもサマンサタバサらしさを出すことができましたが、もっと進化させていきます。サマンサベガは若年層向けで、タバサが20、30代中心で意外に40代以上にも支持され、二つのすみ分けができてきました。タバサはさらに高級化、高品質化の方向で商品を進化させていきたい。ただ、これは価格を上げるということではなく目利きの消費者に選ばれる商品内容に引き上げていくということです。今年の春に、あるチーフデザイナーを起用してサマンサタバサに携わってもらい、新しいフレーバーを注いでいくことにしました。もともとのデザイナーは引き続き、ブランドらしさを追求しますし、ブランドを変えるわけではありませんが、新鮮さを加えるということです。来春夏は鮮度ある提案ができそうで楽しみです。

 それから新たにこれまで置いていなかったMDをタバサに置きました。今までおそらくブランド全体で見ていたんでしょう。生産と販売の両方を管理する担当がいなかったので、MDを置くことで状況を見ながらブレーキを踏むことができるし、生産販売のずれを抑えていきます。成果が出れば、他ブランドでも置きたいと思います。

 販促面では攻めと守りのバランスをとっていきたい。これまで宣伝はやや派手な広告を打つことが多かったですが、ややリスクが大きい。特にコロナ禍では厳しいと思います。そこで年末からポップアップ(期間限定店)を重点的にやっていきます。目立つ場所で、売り上げを取りながらブランドを再認識していただく形で進めます。

もんでん・つよし 1960年広島県福山市生まれ。早稲田大学法学部卒。1984年旭化成工業(現旭化成)入社、91年モンデン取締役副社長、2000年アディダスジャパンアパレルディビジョンデパートメントマネージャー、01年ザラジャパン社長、06年ファーストリテイリング執行役員海外事業本部長、08年アニエスベーサンライズ社長、13年アガタジャポン社長、18年コナカ専務執行役員経営企画室長、同専務取締役COO経営企画室長(現任)、19年10月サマンサタバサジャパンリミテッド上席執行役員、12月から社長。

■サマンサタバサジャパンリミテッド

 94年設立、バッグブランド「サマンサタバサ」をスタート。07年にはメッセージを子会社化し、アパレル事業を開始した。アジア、欧米にも出店し、レディスバッグでは日本を代表するブランドに成長させた。ジュエリーやメンズバッグも展開している。セレブやタレントを起用した独自の販促でヤング層を中心にファンを広げてきた。19年にはコナカと資本業務提携し、20年7月にフィットハウスを吸収合併し、コナカの連結子会社となった。20年2月期売上高235億円。

《記者メモ》

 19年12月に社長に就任して、間もなく新型コロナウイルスの感染拡大で厳しい環境下でのスタートになった。このため、百貨店やディベロッパーなど取引先などをほとんど回れていないようで、これからあいさつに回るという。これまでいろいろな企業に携わってきただけに、企業の風土や特徴、強みなどは敏感に把握されているようで、取材ではサマンサタバサジャパンリミテッドの特徴について興味深く聞けた。スタッフのレベルの高さは特に強調していた。

 「株主総会でも心強く意見していただける株主が多い」とのことで、例えばこの商品は価格をもう少し高めに設定してもいいのではないか、といった前向きな指摘をする人が多いという。「株主にも恵まれているようで、こうした支えも踏まえ、日本最大のバッグブランドをしっかり強くしていきたい」と意気込みが確認できた。

(武田学)

(繊研新聞本紙20年9月4日付)

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