フォーニーム「エンハーモニック・タヴァーン」 地産地消に広がる共感

2020/12/29 06:27 更新


「地産地消を世界に」と丸岡さん(名古屋三越栄店ニューヨークランウェイで)

 フォーニーム(愛知県岡崎市、丸岡武史代表)のメンズ主体のブランド「エンハーモニック・タヴァーン」が共感の輪を広げている。同社はOEM(相手先ブランドによる生産)と同ブランドの卸販売の二つの事業を運営するが、今後は事業規模の大きなOEMを絞ってでも、「エンハーモニック・タヴァーンに力を注ぎたい」としている。

 エンハーモニック・タヴァーンは丸岡さんを中心に4人のチームで10年前に立ち上げた。主要都市の百貨店やセレクトショップなどに販売先が広がり、10月には名古屋三越栄店3階の自主編集ショップ「ニューヨークランウェイ」での販売も始まった。「物作りへのこだわりや、ブランドの世界などひきつけられる要素が多く、婦人ファッションのフロアだが、メンズ、レディスの垣根を越えて需要を掘り起こそうと導入を決めた。週末はカップルでの購買も多く、手応えを感じている」(名古屋三越営業本部栄統括店婦人・紳士・子供ファッション営業部婦人ショップ担当バイヤーの藤田隆範さん)と期待を寄せる。

 エンハーモニック・タヴァーンは、「地産地消」を唱え、製品の多くは尾州産地の毛織物や遠州産地の綿織物など国内素材を、名古屋や岐阜地区で縫製加工している。

 その背景にあるのは、需要を大きく上回るアパレル製品の供給状況だ。売れ残った多くの製品が廃棄される。高校時代、昼食を抜いてお金をため、地元のセレクトショップに通ったほど、愛情深く服に向き合ってきた。専門商社で服作りのオペレーションに携わり、その後独立して起業しても、服への思いは変わらない。むしろ熱量はさらに高まっている。大量生産され、売れ残った服がぞんざいに扱われるのは我慢できないこと。日本人が古くからよりどころとしてきた〝足るを知る〟の心で、服を大切に作り、大切に売り、大切に着てもらいたいと呼びかける。

 会社を支えてきたOEMを縮小してもいいと考えたのも、「たくさん発注が来るとうれしい半面、売れ残り、廃棄される物を作り出しているのではないのかと思い悩む自分がいる」からだ。もちろんOEMでも、着る人に喜んでもらえるよう、ていねいに大切に服を作る。それでもコストに見合うロットをまとめる上で、どうしてもロスが発生してしまう。

 丸岡さんは、年末年始に熟考しその1年の会社の方針を立ててきた。19年は「グローバルとローカル」をキーワードに、地産地消をグローバルに広げようと、ジャカルタ・ファッションウィークに参加した。日本で製造した商品を持ち込むのではなく、現地素材を現地で縫製し現地で売るというジャカルタ版の地産地消が狙いだ。「地産地消を世界各地に広げたい」との思いは強まっている。そのためにも「足元を固めたい」と、エンハーモニック・タヴァーンをさらに育てていく考えだ。

(繊研新聞本紙20年11月16日付)



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