業界ビギナーのプリ子と学ぶ、メンズスーツのあれこれ

2018/08/19 06:25 更新


 今回はメンズスーツ編です。スーツ業界の歴史とともに、最近注目を集めるオーダースーツの現状について、業界ビギナーのプリ子が繊研新聞社の記者に聞きます。

Q.今日のスーツの歴史はいつごろ始まったのですか?

 英国で1860年代に誕生したラウンジスーツがビジネスウェアとして世界的に確立したのは第1次世界大戦(1914~18年)後になります。

 当初は今のような大量生産の既製服ではなく、オーダーメイド(注文服)で仕立てるのが普通でした。現在もロンドンのサビルローには注文服を作るテーラーが残っており、オーダースーツの業者としては代表的な存在です。

画像はイメージです

 日本では明治時代以降の西洋化の流れもあり、一定普及しましたが、オーダーメイドスーツのシェアが圧倒的に高くなったのは第2次世界大戦後の1950年代と言われています。今も商店街などに残っている個人営業のテーラーが当時は全盛で、スーツは注文して誂(あつら)えるのが当たり前の時代でした。

 既製スーツは店にハンガーにかけた状態で陳列されており、「つるし」と呼ばれていました。その後、60年代にアイビーファッションの大ブームが起こり、既製服と注文服のシェアは逆転していきます。

Q.オーダーメイドにも作り方にいくつか種類があるそうですが?

 大きく分けて

  • フルオーダー
  • イージーオーダー
  • パターンオーダー

 の3種類あります。それぞれ、自分好みのサイズはもちろん、生地やデザイン、ディテールまで選ぶことができます。

 フルオーダーはビスポークとも言われ、顧客一人ひとりと対話を重ね出来る限りの要望に応える。採寸データに基づき型紙を作成し、仮縫い工程を経て、熟練職人がハンドメイドで仕立てる高級品です。そのため、時間も手間もかかり、高額になります。

 イージーオーダーはCAD(コンピューターによる設計)によるグレーディング技術を駆使しカスタマイズされたスーツを工場で量産するものです。これは日本が独自に進化させてきたオーダーシステムで世界的に見ても希少なものです。自社工場を持つグッドヒル、佐田、センチュリーグループ、花菱縫製、ビッグヴィジョンなどが代表的な企業です。

 パターンオーダーはモデルとなるマスターパターンなどを前提にゲージサンプルと呼ばれる複数のサイズから自分に合うものを選び、そのサイズで、生地や裏地、オプションでディテールやボタンなどを自分の好みで決め、作るものです。アパレルメーカーの既製服ブランドなどに多く見られます。

Q.最近はデジタル技術を活用した新しいオーダー方法もあるそうですが。

 ここ数年で、2着目以降はスマートフォンで簡単に注文できる店も出てきました。

 かつてのオーダースーツ専門店が「敷居が高い」と言われたのは、価格設定や仕上がりイメージなどの分かりにくさがあったためですが、新規参入してきた大手紳士服専門店がデジタル技術の活用によってそれを解消しようとしています。結果、こうした専門店はオーダー初体験の若い世代の獲得に成功しています。

 青山商事はオーダー主力の「ユニバーサルランゲージ・メジャーズ」を軸にタブレットで3D撮影して仮想試着ができる「バーチャルフィッティングアバターシステム」を接客に活用しています。アバターを使えば画面上で瞬時に色柄やデザインを無数に試したり、スーツやシャツまでトータルで着せ替えられたり、細かい質感まで画面上で確認することが可能で、初心者から好評です。

店頭でのプロの販売員による採寸・接客が大切(青山商事「ユニバーサルランゲージ・メジャーズ」)

 AOKIもオーダースーツの新システムを全店に導入し、オーダーへの抵抗感を払拭(ふっしょく)し新たなファンを増やしています。コナカの「ディファレンス」では店頭で採寸した初回購入時のデータがあれば、2着目以降はスマホで注文が可能という利便性も魅力です。

 そのほか、既存の専門店に加え、大手アパレルやIT系新興企業もオーダースーツ市場に参入し、今後はますます競争が激しくなるでしょう。

タブレットの画面を見て簡単に好みの生地やデザインが選べる(コナカ「ディファレンス」)


この記事に関連する記事