楽天ファッション・ウィーク21年春夏 今の都市生活を捉えたエレガンス

2020/10/20 11:00 更新


 楽天ファッション・ウィーク21年春夏の最終日は、若手のブランドを中心としたフィジカルのプレゼンテーションが相次いだ。渋谷区の新名所、宮下公園では、関連イベントの「シブヤハラジュクファッション・フェステバル」によるショーも行われた。現代の都市生活を捉えたエレガンスの形など、新しい価値の表現に挑むクリエーションが目を引いた。

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 宮下公園でショーを行ったミキオサカベは、デザイナーの坂部三樹郎とパートナーのシュエ・ジェンファンが共作したコレクション。昨年からオリジナルのスニーカーを出しており、「地面と人間の関わり、身体的な活用を意識しながら進化するファッションを形にするなかで、人に会ったり、外を散歩したりする感覚を大事にしたいと屋外のショーを考えた」と坂部。薄手のテクニカル素材をベースに動きやすさを配慮しつつ、袖にふくらみを持たせたフォルム、ドレープの変化で柔らかな女性らしさを引き出した。アシンメトリーなドレープの入ったトップにミニスカート、肩のラインが少し張り出した白シャツにピンストライプのドロワーズ。透明感のある素材にファンシーな花柄を施し、破れた異素材を切り替え、足元はジュエリーカラーのスニーカー。ガーリーでスポーティー、そこに経年変化の重たさを加えた、未来的なストリートスタイルを見せた。

ミキオサカベ
ミキオサカベ

 シブハラフェスで1年半ぶりにショーをしたパーミニット(半澤慶樹)も、会場は日が沈んだ後の宮下公園。「街との連動を意識したショーで、エレガンスを多面的に表現した」と半澤。バッスルを前に持ってきたような構造でフロントに大きなボリュームを出したオフショルダードレスに、背負ったバックパックのベルトを胸元でクロス。コクーンシルエットを描くナイロンのキルティングスカートに肩の丸いシャツをレイヤードし、ジップストラップのミニポシェットを複数重ねてウエストラインを強調する。女性らしい立体のフォルムをベースに、今の時代を象徴する機能的な要素を取り込んでいくバランスが光った。

パーミニット
パーミニット

 リコール(土居哲也)は、異素材や様々な洋服をドッキングする手法を軸に、多様性に富んだ構造をフィジカルショーで見せた。この間、土居が取り組んできた時代や国籍、性別、文化が混在する今を切り取る、既にあるものの痕跡を再解釈する「リトレース」をアップデートさせたコレクションだ。テーラードジャケットの肩から袖の部分のパーツを複数連ねてボリュームを出したり、2組のスウェットパーカを融合して片方に縫いぐるみの顔をのぞかせたりとユニークな発想を広げる。黒人の男性モデルが白シャツを頭から幾重にも重ねたウエディングドレスを着用するなど、リトレースの進化版としてフォーマルドレスの新しい美しさを表現した。

リコール
リコール

 アフリカと日本のクリエイティブ産業の交流を促すプロジェクト「フェイスエージェー」は、ナイジェリアの首都ラゴスで人気のスケートボードブランド「ワッフルズアンドクリーム」と協業するライブショーを見せた。当初の会場は宮下公園だったが、雨天のためにエイチ・ビューティ&ユースに併設されたピザ屋にハーフパイプを設置して行った。プロのスケーターやモデルの12人が集まり、協業で企画し、日本で生産したTシャツやパーカを着用。自由なムードで力強いパフォーマンスを披露した。「失敗しても楽しい、その緩さがスケートボートの魅力。都会で自然発生的に広がるカルチャーを共有していきたい」とプロジェクトディレクターの栗野宏文さん。Tシャツの背中には、ワッフルズアンドクリームの一員が描いた、東京に遊びに来たシーンのコミック画がプリントされている。今回、彼らの来日は果たせなかったが、同プロジェクトを仲介するアワトリは「SNSの発信で楽しんでもらえるはず」と話した。

フェイスエージェー

 ジン・カトー(ジン・カトー)は、カラスの羽根のような黒、ウェディングドレスを思わせる白のフェミニンなドレスを見せた。レースの重ね、ティアード、フリルのディテールは手の込んだもの。再生をテーマにし、「久しぶりにショーに取り込んだことで自分自身が再生できた」と、最後にゲストを前に話した。

ジン・カトー

(須田渉美、赤間りか)

 シュープ(ミリアン・サンス、大木葉平)は、東京とマドリードをベースにするユニセックスブランド。ロンドンファッションウィークに参加したのに続き、東京でもフィジカルなショーをした。DJとパーカッションのライブ演奏に合わせて、ミステリアスなムードのモデルが現れる。フロントファスナーを走らせたカーゴパンツ、オーガンディのベールをかぶせたミリタリーパーカ、ユーティリティーアイテムにパーツの足し引きで変化を作る。膝あてのようなパーツや取り外しができるスリーブがシンプルなアイテムのアクセントとなる。ただ、アイテム一つひとつの輪郭がおぼろげで、きちっと作りこまれたプロダクトとしての完成度がもっと欲しい。

シュープ

(小笠原拓郎、写真=ミキオサカベ、パーミニットは堀内智博、フェイスエージェーは加茂ヒロユキ、リコール、ジン・カトーとシュープは南部菜穂子)



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