楽天ファッション・ウィーク22年秋冬 優しさを持って未来に向き合うメッセージ

2022/03/18 06:28 更新


 楽天ファッション・ウィーク22年秋冬は、優しさを持って未来に向き合うメッセージを伝えるデザイナーの姿勢が目立った。ペール系のピンクやイエロー、水色などソフトな色使いが広がる。フィジカルショーは、より多くの人に伝えられる会場や手段が配慮されている。

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〈フィジカル〉

 21年春夏にデビューしたタナカダイスケ(田中大資)が初のショーを行った。刺繍作家として活動する田中が表現したのは、現実とファンタジーが交錯するような世界。刺繍やビーズ装飾を自ら施すクリエイションに憧れを感じさせながら、それを見る人が身近に引き付けられる余白も持ち合わせる。冒頭に出てきたオーガンディのロングドレスは、細い線のビーズ装飾がストライプ状にカーブを描く。白のテーラードジャケットを飾るのは、ぽろんと咲く赤い花のコサージュ。トップに城の刺繍を施したシルバー色のドレス。緻密(ちみつ)さを感じさせながら、盛り過ぎない柔らかなタッチが新鮮だ。「自分の中のロマンを紹介したいと思った」と田中。ティアラやパールビーズのブラといった、きらきら輝くアクセサリーも目を引き、どこかはかなさを伴った二面性を持つ表現力に魅力がある。

タナカダイスケ
タナカダイスケ

 ベッドフォード(山岸慎平)は、経済産業省の産業高度化推進事業の一環でAR(拡張現実)を活用したプレゼンテーションを行い、秋冬コレクションのショーを見せた。会場に入ると、ARグラスや携帯で読み取るバーコードが用意されている。来場者は、クレッセント社の4Dボリュムメトリス技術で撮影され、秋冬のスタイリングを着用したモデルがウォーキングする動画を鑑賞することができる。会場は、舞台裏のメイクスペースが地続きになり、同じモデルが同じスタイリングで準備を整えてフリータイムを過ごしており、ARの動画の持つリアリティーと差異を体感できるユニークな発表の場となった。

 秋冬コレクションのイメージソースは「少年になる前の男の子の世界」。ジャストフィットのジャケットにシャツのボウタイを無造作に巻き付け、レギンスのようなラメパンツ。ベッドフォードらしい艶っぽさを無邪気なムードに引き寄せる。クリーム色のレザージャケットには星形やピースモチーフのボタンが付く。テーラードアイテムはペールイエローやペールピンク、ブルーグレー。男としての意識が強くなる前の無垢(むく)な感性を心地よいトーンで表現する。一方で、ネオンカラーが入り混じったフェイクファーのコートや帽子を差し入れ、気取らずにファッションを楽しむ遊び心を添えている。

ベッドフォード
ベッドフォード
ベッドフォード

 フミエタナカ(田中文江)は、大きなアーケードのある広場でショーを行った。東京のファッション・ウィークでフィジカルショーをするのは4年ぶりで、感謝の気持ちを伝えようと多くの人が見られる屋外会場を選んだ。ショーは、ライトに照らされたスロープをモデルが歩いてくるシーンで始まる。ブラウンのサテンを使ったユニフォーム仕立てのコートに、オレンジとカーキ色の糸でレースのように表現した花柄のチュールドレス。デコラティブなテキスタイルを日常に落とし込んでいく。テーラードのセットアップは、グラフィカルな幾何学モチーフを迷彩柄のように施し、芯の強さも主張する。シンプルなカットのドレスやパンツには、ターコイスブルーのペイズリープリント。耳付きのニット帽をかぶり、どことなく異国情緒が漂う。後半はブロンドヘアーのようなフリンジと三つ編みを組み合わせたベストやドレスのスタイリング。まぶしい光のなかで、宇宙からやってきた使者を思わせる幻想的な光景を描いた。

フミエタナカ
フミエタナカ

 リトルビッグ(馬渡圭太)は、渋谷のビルの屋上でショーをした。「ファッションの楽しさを知った90年代後半や00年代を振り返って、渋谷の混沌とした雰囲気を出したかった」と馬渡。ジェネレーション、ユースをテーマに、リトルビッグらしい力強さのあるテーラードスタイルに、スクールボーイとスクールガールの装いを加え、軽やかなムードで表現した。先染めチェックのトレンチコート、オンブレチェックのシャツをアレンジしたブルゾンなど、滑らかな素材の質感と仕立ての良さで上品に見せる。英国製のストライプ柄を使ったジャケットは、肩線を若干外に出して大人の表情に。レディスウェアは裾を切り替え、背中をプリーツ仕立てにしてクリーンに見せた。

リトルビッグ

(須田渉美、写真=フミエタナカは堀内智博、リトルビッグは加茂ヒロユキ)



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