キャンプ用品「山賊山(サンゾクマウンテン)」 型枠職人が欲しい物を自ら作る

2020/08/09 06:29 更新


 「山賊山」と書いて「サンゾクマウンテン」と読む人気沸騰中のキャンプ用品ブランドがある。無骨な印象を与える黒皮鉄を使い、くの字型に曲がったランタンハンガーなど、これまでありそうでなかったギアを揃える。企画・デザインするのは、代表の渡曾誠治さん。元々は一戸建てやマンションの基礎工事に関わる型枠職人だが、趣味が高じて自らキャンプ用品を作るようになった。「自分が良いと思うものを作り、オファーは断らない」をモットーに、貪欲(どんよく)に世界を広げる。

(杉江潤平)

 代表作のランタンハンガー「ショック」は、既存品は支柱がまっすぐなものばかりで、安定性に優れた商品が無かったことから開発した。鉄の支柱の途中を弓状に曲げることで、ランタンがそのへこんだスペースにつり下がり、バランスを保つ。ハンガーを立てた時のたたずまいが独特で、玄人キャンパーの心に響く。

黒く輝く黒皮鉄特有の質感と、既存のキャンプギアには無い無骨なデザイン

 円筒形のたき火台「マウンコル」も人気だ。「既存のブランドのたき火台は炭が見えづらい」と、側面を切り抜き、模様越しに燃える火を見られるようにした。円の面積を広く確保しているため、まきをがんがんくべて、たき火をワイルドに楽しめる。

たき火台とサイズ展開の多い三角テーブル

 渡曾さんがキャンプ用品を自ら作り始めたのは3年ほど前。五徳のように使える三角テーブルを作り、使っていたところ、それを見たキャンプ仲間らから注文が入った。その次に作ったたき火台でも同様の事態になり、約2年前にホームページを立ち上げ、市販するようになった。現在は北海道から沖縄まで約20のアウトドア専門店や雑貨店などにも卸売りしている。

 デザインは生き物から着想を得ることが多い。先に少し傾斜があり、いくつかの突起とアールも入った火ばさみは、クワガタのあごの形をヒントにしたという。曲線部分にまきをちょうどはまって、挟みやすい。

 渡曾さんはもともと住宅やマンションの基礎工事を手掛ける、この道25年の職人だ。一方で小学生の頃からキャンプが好きで、独学で習得した溶接や図面作りの技術を生かして、自らが欲しいと思うキャンプギアを作り始めた。注文数が増えてくるにつれて、生産は横浜市内にいる職人に依頼するようになったが、図面は今でも自ら描いている。

 公式インスタグラムには2万2000人のフォロワーがいるものの、積極的に宣伝を仕掛けているわけではない。最近の急速な広がりは、「口コミによる拡散効果が大きい」という。今後は外注する職人を増やし、生産量を増やす計画だ。

 創作意欲にもあふれている。金物のギアはもちろんだが、今一番作りたいと熱望するのは、アパレルだ。「アウトドアで活躍する、既存のものとは違った目線の服を作りたい」と話す。

 ビジネスでは海外販売ももくろむ。既に韓国や台湾では実績を積んでいるが、新型コロナウイルスが終息した折には、中国本土で現地生産・現地販売での事業展開を構想する。将来的には「アウトドアの本場アメリカにも進出したい」と胸を膨らませる。

渡曾誠治さん

(繊研新聞本紙20年7月6日付)



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