佐藤せんせの算数で極めるMDへの道⑧
大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。
そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。
■ 前回のレポートはこちら→OTBのロジックを知る
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ではOTBロジックの話の続きに入る前に、Dさん棚卸ロスって言葉知ってます?
はぁ~。なんとなくなくですがわかります。
棚卸後によく経理から、「棚卸あってないんじゃない?」って電話ありません。
それは、すごくあります。その電話って、棚卸のとり漏れのことじゃないんですか?
それもあるかもしれませんが、おそらくこれは棚卸ロスのことを指してる筈なんですね。
へえ~そうなんですか?
では棚卸ロスについて、前回講義した「バッグ屋を3日間営業してみる」のときに使った図を使って説明しますね。Dさんでは前回講義した、OTBのロジックの計算式覚えてます?
期首+(期間)仕入=(期間)売上+期末 期首と仕入(原価)を足した額と売上と期末(在庫)を足した額は同じにしかならないってことですよね。
正解です。よく復習してますね。えらい。前回のケースで、棚卸をいてみたら、実はバッグの個数が25個。期末在庫原価が5,000円になっていたとしたら、Dさんどうですか?
はい。前回のケースだと。期首在庫が100個。営業期間中に入荷したバッグが65個。3日間で売れたバッグが135個なので、(100+65)-165=30なので、営業終了後のバッグは30個の筈です。
はい。その通りです。そう本来、バッグのあるべき在庫個数は30個。在庫原価30×200で6,000円ないといけないんです。このことを理論在庫といいます。
!なるほど。理論在庫は30個なのに、棚卸してみたらバッグが25個しかない。だから経理は「なんで5個もバッグなくなるんだよっ?」と電話してるわけですね。
そうなんですよ。商品がなくなったのか?不良品なのか?その5個のバッグのことを棚卸ロスというわけですね。ページの都合上これ以上棚卸ロスの説明はしませんが、ロス原価が大きい会社・店は、ある意味商品管理が行き届いていないと言えるわけです。
そうかぁ~(なんだかうちの会社ロス大きそうだな。やばいかも汗)。
少し棚卸ロスの話が長くなったので、話を戻します。ところでDさんのブランドのリードタイム(以下LT)は何か月ですが?
商品にもよりますが、2か月くらいですかね?
すると最低でも2か月先の仕入は発注済みということですね?
すべてではないですが、そうですね。場合によってはもっと先の商品の仕入れが決まってたりします。
また会社の決算月に向けて、目標の在庫金額を上司から指示されていますか?
うちの場合売価金額?ですけど、大体の額は言われてますし、「とにかく在庫をお金に変えろ」とよく言われますね。
そうですか。ではDさん下記の図を見てもらっていいですか?
(出た。また図かよっ!)
Dさん。因(ちな)みにこの上記の図の6・7月の売上原価が空欄になってますが、6・7月のそれぞれの売上原価がいくらになるかわかります。
6月が5,000で7月が10,000です。
正解です。ここからは私が部長で、DさんがMDだと考えてください。
へえ。
今現在を4月25日だとしましょう。私はMDであるDさんに7月末の在庫を3,000にしなさいと指示を出しています。Dさんは5・6の売上・粗利率を基に、5・6月の売上原価の予測を5月が5,000.6月が5,000と予測しています。また、5月の仕入原価は5,000.6月は6,000これはもう発注済みです。そして、7月が7,000の仕入原価を予定しています。これが上記の図で表現されています。Dさん上記の図をみて、気になるところありません?
う~ん??? なんだか7月の売上原価が6月の倍いかないと、M部長から指示されている3,000になりませんね~。
いいところ気づきましたね。ブラボー
そうなんですか?
次回は実際のブランド・ショップ運営で起こりうるリアルケースを想定して、上の図に、売上(売価)粗利益率・高を加え、OTB表で表現して説明します。
なんとなくですけど、うちの会社がやっていることに近いような・・・楽しみです。頑張ります。
では次回をお楽しみに!
95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp