岐阜の紳士オーダー「サツキテーラー」 美容院を理想形に地域密着

2021/01/03 06:27 更新


 サツキテーラーは岐阜に根差した地域密着型の紳士オーダー専門店だ。岐阜の商店街、柳ケ瀬のビル一棟を購入して皐(さつき)会館と命名して1階に店舗を開き、柳ケ瀬商店街の役員も兼務している。商店街・地域の活性化にも積極的だ。

(浅岡達夫)

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畑違いから転身

 店主の水野琢朗さんは、岐阜県多治見市出身の30歳。「生家は繊維と関係のない自営業。横浜の大学を卒業してから教育関係の会社に勤めていた」。その水野さんがテーラー店を志したきっかけは、「オーダースーツを作ったこと」「もともと洋服は好きだったが、サイズが合うものが少なかった。オーダー服はサイズもぴったりで着心地も良かった」と語る。「いつかは独立もと考えていたので、オーダースーツ店を開業しよう」と考えた。

 1年半ほど紳士テーラー店で修業した後に、26歳で前身の店を柳ケ瀬商店街に開業した。18年には4階建てのビルを購入して皐会館とビル名を変更し、「サツキテーラー」を開いた。

購入した5階建てビルの1階90平方メートルの店舗

 考えたのは、「こだわりの服とか高級な服ではなく、その地域の人が気軽に入店して好みの服を仕立てられる店」。店舗の理想形は美容院。「美容院は顧客と雑談しながら好みを探り最適な髪形をアドバイスして満足してもらう業態。テーラーも同じではないか」との思いからだ。

 「1回目の来店時に採寸して、提携先のオーダー縫製工場に発注。2回目の来店時には納品できるように心がけている」と水野さん。地元の尾州産地のほかイタリアや英国のテキスタイルメーカーの生地を使う。採寸時の顧客の体形、好みの違いなどを顧客から聞き、最適なスタイリングを提案している。

皐会館には様々な業態が入居して地域を活性化

県内業界人と連携

 顧客は「中小企業経営者など90%が岐阜市内及び近郊」。柳ケ瀬商店街には古くからテーラーは数多くあったが、「現在は当店を含めて2店。スーツを作りたい人は、何回も店に通う必要があるので地元の店に行きたいと考えている。運良くテーラーの世代交代期に開店できた」。

 水野さんは柳ケ瀬商店街全体の青年部長、一丁目商店街理事長を務めている。「せっかく柳ケ瀬商店街に開店したのだから、商店街全体も活性化して欲しい。また若い店主にも参画して新しいファッションストリートができれば」と語る。

 皐会館には、飲食店のほか岐阜市立女子短大の臼井直之助教による学生との生活デザイン・建築の拠点、各種活動が可能な貸しスペースなどが入居している。

 水野さん自身も服飾系の大学や専門学校・高校などでオーダースーツに関わるセミナーなどに講師として参加するほか、岐阜の毛織物業界やアパレル業界の経営者とも連携している。

 「地方にオーダースーツ文化やファッションが根付く活動にお役に立ちたい」と、言葉に熱意がこもる。

地域密着型テーラーを目指す水野さん

(繊研新聞本紙20年11月30日付)



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