ニューヨークの電車の中など、公共の場所で電子書籍を読んでいる人を見かけることが多くなってきたと感じ始めて2~3年になるだろうか。キンドルなどの価格が下がってきたこともその一因だろう。
私自身はいまだ紙の本を読んでいるが、読まなくなった本をブックオフに何度も持っていったことを思うと、電子書籍であれば大量の本を抱えることなくもっと身軽に生きていける利点もあるのだろうな~旅行のときも荷物にならないメリットはあるな~と考えることもある。
そんなときふと、本の著者や出版する側にとっての電子書籍のメリット、デメリットってなんだろうと考えた。
以前、繊研新聞本紙の書評欄でもご紹介したことのある、ニューヨーク在住の佐久間裕美子さんが書かれた「ヒップな生活革命」(朝日出版社、写真下)。7月に出版された紙の本は書店のランキングに多数入り、発売から3週間で増刷がかかったほど売れている。9月にキンドル版が出たが、キンドル版が出ることは最初から決まっていたという。
佐久間さんは、電子版が出た後、特に紙の本の売れ行きに影響があったと感じてはいないそうだ。ただ、朝日新聞の読書欄とライフハッカーのインタビューが同じ日に出たときは、かなりネットで拡散され、数日間アマゾンで紙が在庫切れになり、そのときは電子書籍があってよかったと感じたという。
佐久間さんはまた、「海外に住んでいても、裏ワザを使えばキンドルで読むことができるようで、海外在住の友人たちには喜ばれました。この先どんどん広がっていけばいいなと思っています」と語る。佐久間さんは、12年に電子メディアのPERISCOPEを日本語と英語で立ち上げ、編集長を務めている。
その関係で、「電子のメリット・デメリットは常日頃から感じています。メリットは、制作や流通のコストを抑えられること、デメリットは、実物を見てもらう機会が少ないので、マーケティングが大変だというところでしょうか」と話す。
一方、9.11のテロに巻き込まれた恋人たちを描いた恋愛小説「あなたを待ちながら~夕子のNY日記~」(株式会社クリーク・アンド・リバー社ライツ・マネージメントグループ)を日本語版と英語版(英語版のタイトルはWaiting for You)で出した伊藤操さんに、何故電子書籍という形態を選択したのか尋ねてみた。
伊藤さんは、「近代美術館やセントラルパークのボートハウスのレストランなど、実在の場所がたくさん登場しますが、それらのURLも掲載することで、紙では実現できないリンクが出来て、ニューヨークの臨場感を体験できるのです」と説明する。
伊藤さんは、この小説に登場するラブソングも作曲した。「将来は音楽が聴ける本ということもやってみたいのです。電子書籍は、紙の本ではできないさまざまなことができるので、電子書籍に挑戦しました」(伊藤さん)。この小説は8月以降、35カ国に配信され、今秋50カ国に増えつつあるそうだが、そうしたことも電子書籍だからこそ可能になったに違いない。
一方、伊藤さんの感じるデメリットは、「電子書籍は謹呈や、たくさん買ってプレゼントするということが出来ないことです。また本という物体に触れることが出来ないのが、少し寂しいということです」とのこと。なるほど、いろいろと参考になりました!
ちなみに、11月5日から銀座三越で1週間、ニューヨークウイークが開催されるが、8日17時から9階の銀座テラスで、小説の出版にちなんだ伊藤さんのトークショーが行われる。小説の主人公はニューヨークに住む日本人ファッションジャーナリストということもあり、伊藤さんはニューヨークのファッション、スイーツ、コスメ、ジュエリーの最新情報を話す予定だそう。ご興味のおありの方は是非チェックしてみてください!
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)