デジタルへのアンチテーゼな在り方(杉本佳子)

2018/01/23 14:30 更新


 今、マーケットプレイスはデジタル化がどんどん進んでいる。それは今後も続くだろう。しかし、ファストフードに対してスローフードが出てきたように、デジタルやトレンド志向、大量生産が進めば進むほど、その反動が必ず出てくる。

 メインストリームにはならないが、サブカルチャーとして無視できない存在になることはあり得る。かつてはニューヨークコレクションで毎シーズンショーをしていて、ここ数シーズン休止状態のブランドのデザイナーに最近偶然会った。今年中に再始動を計画しているそうだが、「もうシーズンごとのものづくりはしない」と言っていた。それを聞いて、それも今の時代にある意味あっていると思った。

 イーストビレッジにある小さな日本食レストラン「居酒屋」のオーナーである金山雄大さんは、ファッション工科大学を卒業してファッション業界の仕事に関わりつつ、レストラン経営をしている。

 これからはもっとファッションと食の両方に関わっていきたいそうで、メンズのトレードショー開催時期に合わせ、1月21日から28日までの午後1時から4時まで、アーミッシュの人たちがつくった商品を展示・販売するイベント「ア・プレーン・ピープルズ・ミーティング」を居酒屋で開催している。

 今回は男性向けの商品が中心だが、ファッションウイークにあわせた2月8日から1週間くらい、女性向けの商品を中心に同様のイベントを開催する予定だ。


 金山さんは何度かアーミッシュの村を訪ね、「こんなにゆっくり英語を話す人たちがいるのか」という印象をもったそうだ。コンピュータやインターネットも使わない人たちなので、コミュニケーションはなんと手紙!それに、つくっている人たちへの「リスペクト」がないと感じられたら売ってもらえない。それでも、エコやサステイナビリティーも含め、つくられるものに魅力を感じ、イベントに出した商品はすべて買い取りしたそうだ。


 例えば、什器として使った家具もアーミッシュの人たちがつくったものだが、釘を使っていない。ホウキの黒はトウモロコシの自然な黒そのままで、色落ちしないという。帽子はすでに南青山の「レショップ」に入っている。ヤギのミルクでできた石鹸は、口に入れても害のない成分のみが使われている。


 革製品はトートバッグ、サドルバッグ、ベルト、カードホルダー、キーチェーンの他、レザーのハエたたきもある。レザー製品は1800年代のミシンで縫われていて、レザーを重ねても針が入っていくそうだ。トートバッグを下げてあるフックは、本来肉を吊り下げるためのものである。


 金山さんと組んでこのイベントをやっているブライアン・ノリスさんは、アーミッシュの人たちが暮らすペンシルバニア州ランカスターの出身。

 80年代から90年代はニューヨークのファッション業界で働き、その後ランカスターに戻った。今は、アーミッシュとメノナイトの人たちのものづくりをプロモートしている。居酒屋のイベントで販売された商品の一部は、ノリスさんがやっているforagerco.comのサイトでも買える。


 ランカスターはアメリカで最も難民を受け入れている「難民キャピタル」でもある。アーミッシュの人たちも元々ドイツからスイスを経てアメリカに渡った難民だったので、難民への理解度が高いそうだ。

 コンゴ、ソマリア、シリアからの難民が特に多い。ザンビアの難民キャンプに16年いた後にランカスターに来た人で、英語はわからなくても縫い方を知っている人もいたという。ノリスさんはそういう難民がつくったものを別途、refugeemakersproject.comで紹介している。



89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



この記事に関連する記事