ニューヨークと日本を拠点に活動し、国内外のセレクトショップを販路に成長し続ける「タナカ」。新設したアトリエストアで開いた「タナカとデニム」展は、日本製のデニムの生産現場にフォーカスしながら、過去から新作に至るプロダクトを展示した。デザイナーのタナカサヨリにその思いを聞いた。
(須田渉美)
26年秋冬はショーを行いましたが、27年春夏に向けては、ファッション的な華やかさだけでなく、デニムの神髄を伝えるアプローチをしたいって思いが強かった。設立から10年目に入りましたが、日本でも、ファッションが好きな人たちに広く認知されるようになった実感はあります。ただ、そこだけではなくて、デニム好きの方も含めて、愛着を持って着てくれる人に届けられたらいいなと思っていて。時間が掛かることですが、もう少し踏み込んで、デニムの物作りの奥深さを伝える積み重ねを大事にしたい。アトリエと直営店を同じ建物に移設したのも、モノの魅力だけでなく、作り手の存在を身近に感じてもらいたかったからです。
デニムにこだわる原点の一つは、ニューヨークで感じた共存の感覚。人種のるつぼと言われる社会で仕事を始め、自分たち日本人は何者なのかを考えるようになった。アイデンティティーを理解することが共存につながります。そこで日本人としてのデザインのセンシビリティーに気付きました。同じ織機を使っても、日本製のデニムは、米国製のデニムとは異なって整った風合いに仕上がる。米国の市場に入っていける隙間を感じて、デニムを軸にブランドを展開していきました。
当初から使っているのは、カイハラのデニムです。端正な顔立ちがとても好きで、染料だけで彩度の高い青みを出せることも日本らしい。加工を依頼する西川デニムは、手作業の繊細さに秀でています。昔から自社内に洗い加工の水の濾過(ろか)処理施設を整えていて、飲める水準まで濾過してリサイクルしている企業です。
工場を訪れた時に、きれいな生地の顔には生産背景が反映されていると、私自身が実感したことです。世の中でもっと評価されてよいことです。タナカとデニム展ではその現場に携わる人たちを伝えたいと、インタビューを交えた映像を制作しました。それぞれがつむぐ言葉に深みを感じます。
