パリの新年を救う美味な小悪魔(松井孝予)

2022/01/18 06:00 更新


ノートルダム(後方)に向かいコロナ収束を祈る

ボナネー BONNE ANNEE 2022

あけましておめでとうございます。

2022年へのカウントダウンから、コロナ感染者のカウントアップで幕開けしたフランス。

その数、10万、20万、30万、と10万単位で急増し、あっという間に40万人を突破。減っても30万人で高止まり(24時間内で)。

膨大な数の抗体テスト、病欠者、自己隔離続出で社会インフラが揺らいでも、何とかやっていけるのは医療関係者のおかげです。ありがとう。

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パリの空も風景もグリザイユ(灰色トーン)、「ボナネ」気分もめでたさもなにもないそんなこんなのコロナの日々に「新年」の光をもたらせてくれたのが、エピファニー / EPIPHANIE !です。日本語なら「公現祭」。

日本でもいつの間にか新年の行事に昇格したらしい、ギャレット・デ・ロワ / GALETTE DES ROIS を食べる日、いやいや、イエスキリストの誕生を祝い東方の三博士が訪問した日をギャレット・デ・ロワで祝うめでたい日。ROI は王様を意味します。

さてこのエピファニー、1月最初の日曜日とか1月31日までとか、勝手な諸説がいろいろあるのですが、正解はずばり1月6日のみ。

でも実際には、ノエル(クリスマス)の翌日からギャレットはマーケットに出回り、バターを香りを漂わせながら美味で華やかな香りを振りまくんだから。

正月太りが主役となるこの小悪魔、日本のギャレット・ドゥ・リ(餅)どころではない。1食100グラムあたり408キロカロリー(クラシックなギャレットの場合)を発揮するんだから(ギャレット・ドゥ・リは100g/223キロカロリー、でもあずきやきなこ次第かも)。

最高のギャレットのひとつ、ジャック・ジュナン Jacques Genin のInstagram/jacquesgenin を見れば、その美しいバターの量が分かります。

だからと言ってダイエットに頭を変換するなんてとんでもない。

ダイエットを試みると、長期的に必ず体重が増加することを実証した研究(2012年)、そしてその4つの原因を突き止めた研究(2018年)がDianne Neumark-Sztainer, Katie A. Loth らによって発表されている。

2022年 新年ギャレットトレンド

楽しみ方

ご存知のようにエピファニーにガッツきたい魅力だけでなく、ゲーム的な要素がある。ギャレットの中に隠されたフェーヴ(ソラマメの意)を当てた人が、一座のロワ(王様)かレーヌ(お姫様)となり冠とその年の幸せをゲットする。

ギャレットはみんなで分けて食べるのが美味しいですね。

昨年はこの習慣をzoomでやろうにも、目の前にあるのはせいぜいおひとり人さまか2人向けの小ぶりなギャレットでイマイチな気分でした。

今年は行動制限がないので、集合前に抗原体テスト(マイテストもあり)で自己の陰性を確認すれば、親戚か友人範囲のギャレットの集いは可能(政府は新年会を禁止している、のだが)。

犬だって当たりたい!(もちろんだよ!!)

フランス産100%

フイユテ(パイ生地)の中身はフランジパン(アーモンドクリーム)がクラシックなギャレットだが、今年はフランス産の材料にこだわりを強調するパティシエ、パティシエールが増えた。コロナの時代を反映している。

元々バターはフランス産がお決まりだったが、要はアーモンドと小麦粉ですね。その典型がル・ボン・マルシェの食品部門ラ・グランド・エピスリー・ドゥ・パリ Grande Epicerie de Paris 。

バター、「皮付き」アーモンド、小麦粉など100%フランス産を選択した。アーモンドが皮付きのためフランジパンがカラダによさそうな健康的な色だ。

ギャレットにはアーモンドのサブレがのせられていて、ちょいとオランダ風。そしてバターはパールのような乳白色が美しいシャラント産!、エレガントな風味。

グランド・エピスリー フランジパンが香ります

グルテンフリー

ありそうでなかったグルテンフリーのギャレット。

Maison Mulot メゾン・ミュロの今年のレパートリーに登場した。子供たちを対象にした絵画コンクールの優秀作を起用したフェーヴに和む。

ほのぼのギャレット

新人賞

ニナ・メタイエ Nina Métayer 

ミシュラン3つ星レストランのパティスリー部門で経験を積み、テレビ番組でスターとなった33歳、めちゃかわいいニナの初の売り場がプランタン・デュ・グ(プランタンの食品・レストランフロア)に昨年秋オープン!

今までネットでしかオーダーできなかった彼女のギャレット・デ・ロワがここで買えるとはありがたい。

とにかく美しい、レリーフのようなギャレットでナイフを入れていいのかどうか悩んでしまうほど。

今年のモチーフは、チャイコフスキーに捧げる「くるみ割り人形」。アーティストのアレクシア・ルペルティエがテュイルを制作しています。

フイユテのバターはシャラント産、フランス産小麦粉とオーガニックのエポートル。中身はノワゼット(ヘーゼルナッツ)。

アートピースのように、そして繊細なギャレット

カプセルギャレット

「AMI アミ アレクサンドル・マテュッシ」はカプセルコレクションならぬワンウィークエンド限定ギャレットを販売。

どこのパティスリーメゾンなのか、ギャレットのコラボメゾン名分からず。ハートにAのクロンヌ(冠)、「被ってみたい!」と思わず目がハートになった。

フェーヴはハートのエースのカード風。これをキッカケに、来年はファッションブランドのギャレットの香りが広がりそうな。

ファッションギャレットも登場

ギャレット・デ・ロワはデザートや朝食、おやつのカテゴリーに止まらず、豚肉とかフォアグラを詰めたフランスらしいお食事系のレパートリーもあり(肉まんもあればあんまんもありといったところか)。

ギャレットのヴァリエーションについては、鬼が笑っているでしょうが来年のお正月に乞うご期待!

それではアビアント!

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松井孝予

(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。



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