■パリB面が面白い!
「サントノレ( Saint Honoré )より、サンマルタン ( Saint Martin )が面白いよね」と誰かが言った。いや、「誰」というより、「サンマルタンがイケテル」って、先行くパリジャンは思ってるはず。
パリ10区サンマルタン運河沿いに、カルチャー、モード、ガストロノミー、etc. 水の流れとともに気取りのないオープンな雰囲気が、いろんな面白そうなものを呼んでくる。この流行、または現象を「パリB面」と名付けてしまおう。Saint Honoré じゃなくて、” Ain’t Honoré ” !
絵に描いたようなサンマルタン運河
■シネマから語るサンマルタン運河
古典仏映画好きならご存知の方も多いだろうが、マルセル・カルネ監督(1906〜1996)の「北ホテル / Hôtel du Nord」(1938年)の舞台は、サンマルタン運河の同名のホテルが舞台。ここ、今もレストランとして営業。もし、この映画の撮影当時を覗きたければ、こちらをクリック!
現在の「北ホテル」
そして、ジャン=ピエール・ジュネ監督の「アメリ / Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain 」(2001年)で、ヒロイン? アメリのこの運河での石投げ水切りシーンで、再度銀幕を通して脚光を浴び、観光名所にランクアップ。
この橋にも「ポン・デザール(芸術の橋)」現象が伝染?
■サンマルタンのドン、セルジュ・ベンシモン
シネマの影響も大きいが、サンマルタンを面白くしたのはメゾン「ベンシモン」の創設者、セルジュ・ベンシモンと言っても過言ではない。
1975年に最初のマイブランド「Surplus Bensimon」を立ち上げたセルジュは、サンマルタン運河沿いビシャ通りにアトリエ、オフィス、倉庫を置き、この界隈のクリエーターたちの中心となって、サンマルタンを発展させてきた。
彼と一緒にいるだけで、兎に角、とっても楽しい。生まれながらにして人に愛され、人を集める性格の持ち主だ。そのセルジュは2009年、アトリエの対岸にある当時経営困難だったお気に入りの本屋をマイショップにしてしまった。アルタザール・デザイン・ブックストア / ARTAZART 。
「お客の時は楽しかったけど、このブックストアのオーナーになってからは、店内をあれこれ見回して、点検ばかりしてるよ」と、ボソッとつぶやくセルジュ。
素通りできないアルタザール
でもここのお客のひとりとしては、フォトやキュイジーヌ、ヴォワヤージュのグッドセレクション、そしてカメラやバックやオブジェも揃っているし、文化的発見を毎度楽しませてもらっている。そのお隣にはベンシモンブランドをあれこれ集めた「POP-UP STORE 」も。いつも違う商品、そしてここにショッピングに来るお客さんウォッチもなかなか興味深い。
そうそう、バイヤーたちも「パサージュ・パリジャン / Passage Parisien」にやって来る! これはセルジュが2012年6月に立ち上げたムーヴメント。この界隈で活動する「アニエス・ベー」や「タラ・ジャーモン」「ジャンシャルル・ド・カステルバジャック」「ザパ」などのショールームにおいでよ!という企画。パリ合同展と同時期開催。
アフターお仕事もサンマルタンで、とカフェ、バー、レストラン、アートギャラリーも巻き込んだカルチャーイベントの要素もあり。Merci メルシィ セルジュ!
初回の「パサージュパリジャン」
■ガストロノミー ニュージェネレーション
レストラン「ジュール・ドゥ・フェット」 ジャック・タチのフィルムと同タイトル
運河沿いの話題のレストラン「ハイカイ」
今時のシェフやパティシエたちは、店舗物件を10区に探しているそうだ。実際、友人シェフも4区からサンマルタン運河界隈10区へレストランを引っ越した。食関係では、ヴィネグリエ通り/ rue Vinaigriers が最近特に美味しくなっている。
オープンキッチンのようなブーランジュリー、リベルテ / Liberté (39番地)。ここの週末限定ブリオッシュは取り合いだ。争奪戦になる前に、生産量を3倍に増やしてくれたからよかったが。ビストロ、レ・ヴィネグリエ / Les Vinaigriers (42番地)では、イベリコ、イタリアの生ハム類、自家製白ブーダンに地獄的(よい意味で)なカーヴ。
Bon appétit ! ボナペティ 食をお楽しみくだされ〜!
お昼時 運河沿いは満席
路上のギャラリー グラフィティアートも
アートなモニュメント
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。