鹿革専業の藤岡勇吉本店 代官山に印伝の直営店

2020/10/21 06:26 更新


 鹿革専業の藤岡勇吉本店(奈良県宇陀市)は今夏、印伝の小物を中心とした直営路面店「神楽」を東京・代官山にオープンした。1883年創業の歴史あるタンナーとして、「昔からの技法に基づく本物の印伝の良さを知ってほしい」(藤岡繁壽社長)との思いから、コロナ禍の厳しい市場環境の中でも計画通りに東京出店を決めた。

(大竹清臣)

 同社は鹿革のなめしから染色加工、縫製、仕上げまで一貫生産できるのが強み。「鹿革を代表する伝統工芸品の印伝は甲州や江戸が有名だが、奈良も一線を画した存在感を示してきた。市場にあふれるコスト追求型のシルクスクリーンプリントによる大量生産ではなく、伊勢型紙を使った漆塗りで文様を表現する伝統的な技法を守り続けてきた」と藤岡社長。「これまでは素材の供給先に遠慮して印伝の商品化を避けてきたが、作り手の誇りを込めた印伝を長く愛用してほしい」ため、直営店での販売に踏み切った。

自社生産している印伝の小物が並ぶ「神楽」代官山店

 代官山店は駅から数分の路面立地。店舗面積は約27平方メートル。あまり広くないため、財布や名刺入れなど小物が中心の品揃え。「まず手に取って他との違いを実感してほしい」ので、あえて価格はお土産感覚でも買えるリーズナブルな設定にしている。オープンから約2カ月が経過し、通常の印伝ファンよりも若い40代女性の来店が中心だ。小型のがま口(2800円)やキーケース(4000円)、ファスナー付き二つ折り財布(5000円)などが人気だ。男性には名刺入れが受けている。好みのデザインに柄をのせ変えるセミオーダーなど直営店ならではのサービスも実施している。

 直営店は2年前にオープンした奈良の長谷寺表参道店に続き2店目。今後、代官山店を足掛かりに東京でも数店の出店を計画している。欧州販路の開拓に向けてイタリアのデザイナーとも契約するなど、攻めの姿勢を貫く。

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