《視点》ハンティングチーム

2018/05/24 05:31 更新


 「ジャングルのようなところまで世界を飛び回って様々な生き物を採取するマテリアルハンティングチームがいる」。繊維に関わる企業にこんな仕事があることに驚いた。その企業は、衝撃吸収性に優れるクモの糸を人工合成し、糸にするスパイバーだ。

 同社はクモが糸を作るための遺伝子をクモから抽出し、微生物に組み込んでクモの糸の原料となるたんぱく質を生成して糸にする。同じ要領で、例えばチタン合金並みの硬さがあるというアリの歯や、驚異的な跳躍力を持つバッタやノミの足の筋肉を構成するたんぱく質も人工的に作り出そうとしている。

 採取した生き物の遺伝子解析データは既に5000を超える。産業界に有益なたんぱく質を人工的に生成して実用化できれば、有限の資源である石油由来の合成繊維や、天然繊維に依存し過ぎず「世の中に貢献していける」という。同様の研究は国内外で進められ、多額の資金が集まっているケースもある。繊維をはじめ素材産業を変えようとする新たな勢力の動向に注目だ。(嗣)




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