ここ最近の気候変動で、「春と秋が無くなり日本は『二季』の国になった」と考える人もいるという。個人的には通勤の道すがら、路上で大量に潰れている銀杏(ぎんなん)の香りを嗅ぐと秋の存在を感じずにはいられないが、秋なのにアウターがいらない、半袖で過ごせるという状況だ。「ちいさい秋みつけた」という歌があるが、衣替えに季節の移り変わりを感じる人にとっては、秋を見つけにくくなっているのではないかと感じる。
ファッション業界にとって長引く夏・暖冬の影響は大きい。素材メーカーを取材していても「軽く羽織れるもの」の用途の売れ行きが特にいいと聞く。自分も、ここ最近は羽織り物を着て出かけ、暑さを感じたらいつでも脱げるように前を留めず、丸めて詰め込めるように大きめのかばんを持ち歩いている。
そんななか、「薄くて軽さもあるが、秋冬らしさもある素材」を求める声が多くなっているという。軽く薄い起毛素材や、和紙を織り交ぜた涼感のあるニットなど、メーカーが創意工夫を凝らして生み出したものが、新たな「秋らしい」ファッションの潮流になっている。
(郁)