職人とブランドつなぐ非営利団体ネスト

2016/03/17 12:00 更新


《ワールドビジネスニュース 北米》

 【ニューヨーク=杉本佳子通信員】ネストは、世界各地のアルチザンとブランドをつないで家内工業的に行われている手工芸をビジネスにつなげる非営利団体だ。06年に発足し、現在ニューヨークの本部で9人が働く。パートナーになったことのあるブランドは「ウエストエルム」「パタゴニア」「アイリーンフィッシャー」「PVH」など。会員になっているアルチザンには、日本の会社5社も含まれている。

 

創業者のレベッカ・ヴァン・バーゲンさん
創業者のレベッカ・ヴァン・バーゲンさん

 

 ネストを創業したエグゼクティブディレクターのレベッカ・バン・バーゲンさんは、ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学の大学院で社会福祉を専攻した。在学中にネストを構想していたバーゲンさんは、ビジネスプランのコンペにその案を提出して2万4000㌦の賞金を獲得し、それをもとに卒業後すぐネストを創設。昨年の平均生産量は前年比45%増、売上高は76%増を記録するまでになった。

訓練プログラムと小規模の基盤整備

 ネストが提供するのは、アルチザンの訓練プログラムと小規模の基盤整備だ。アルチザンたちが安全で持続可能な環境で働いているか、新しい機材は必要かといった査定もする。そのための資金はブランドが支払ったり、寄付を募るなどしてやりくりする。バーゲンさんによるとアルチザンを教育することに時間や労力を使う気のある企業は増えているという。ネストは、小売店のコンサルタントなどで運営資金を得ている。

 現在、ネストのメンバーになっているアルチザンは130グループ、3万2000人に及ぶ。手織り、刺繍、ビーズワーク、バティック、ブロック捺染などのテキスタイル関係、かご作り、メタルワークや鋳造を含むジュエリー制作、陶芸、木工が主な分野だ。ネストは見本市やいろいろな国を回ったり、紹介などを経てアルチザンの会員を増やしている。日本からはステンシル、鹿の子絞り、竹細工などで5社が会員になっている。

 

40ブランドがパートナーに

 一方、パートナーになったことのあるブランド数は40だ。アメリカが特に多い。

 昨年は、アフリカのスワジランドでかご作りの技術を高級バッグに生かすプロジェクトを実施した。ジュエリーブランドのエディーボルゴのサプナ・シャーさんが、職人たちにコンテンポラリーなデザインと新しいラインの開発を指導した。3・1フィリップリムのアマンダ・リーさんは、効率的な生産を指揮した。

 他にもプロのフォトグラファーなどがルックブックの撮影や編集をし、イタリアのレザー職人が現地でレザーの扱いを訓練し、S/Bファクトリーショールームがマーケティングと販売戦略を指揮した。出来上がったバッグは、今後高級専門店に売り込む。

 ネストは今後さらに多くのアルチザンを見つけ、デジタルテクノロジーを提供していく構えだ。大概の地域ではインターネットがつながり、最低1人英語がわかる人がいるという。オンラインでセミナーやトレーニングをしたり、トレンドリポートを送ったり、スカイプで1対1のコンサルテーションを実施しようとしている。日本のアルチザンにも大変興味があり、会員を増やしていきたい意向だ。(写真=ネスト提供)

 

「スワジランド王国のカゴ作り職人たちを指導するエディーボルゴのサプナ・シャーさん(中央)」(Caroline Ashkar)



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