《連載 次代への襷》④ ナップ (本紙1月10日付け)

2013/06/17 21:07 更新


 岡山県中央部の山中、加賀郡吉備中央町の廃校跡地。都会の喧騒(けんそう)を離れた自然豊かな環境で、「ほっておくといつまでも仕事を続ける」(河合誠社長)ほど、ものづくりに打ち込む若者の集まる工場がある。  厚手の帆布と革を組み合わせたエンジニアドバッグやメンズの「ザ・シュペリオールレイバー」を手掛けるナップは12年春、さらにものづくりに打ち込むため、オフィスと縫製工場などを岡山市中心部からここに移し、通称“ナップビレッジ”を構えた。「いい環境で楽しくものづくりしている会社がある」と聞きつけ、「ここで働きたい」と門をたたく20代男女が絶えない。  社員は、敷地内にある飲食・物販店「アンドシングス」のスタッフを含め20人に増えた。来春も1人が新卒で入社する。岡山県以外の出身者が半数以上を占める。平均年齢は28、29歳で、一番若い人が20歳、多くが26歳前後だ。エンドユーザーとして同ブランドが好きだったから入社した人に加え、最近は脱サラや他のバッグメーカーからの転職者も多い。  入社すれば1年間は研修期間で給与は一律。革などの裁断、縫製、マスキングテープを貼ってのペンキ塗りなど、物作りの流れや技術を学び、2年目からは各自の実力に沿って給与が決まる。なかには半年で辞めてしまう人もいるが、がんばり続ける人には「このブランドが好き」という共通点がある。作り手みんなが、商品がどの店で扱われているかを知っているし、実際に自分たちが欲しいと思う物を作っていることが強みになっている。12年5月期のブランド売上高は2億円(前期比43%増)になった。  河合社長は移転と同時にここに引っ越した。最近は地元でものづくりを広げる活動もしている。地元の林間学校などで子供向けにレザークラフト教室を始め、「自分のためでなく、誰かのために作る」という商売の基本をルールに、ものづくりの魅力を伝えようとしている。地元の商工会と一緒に、特産であるイノシシの革を活用した製品開発にも取り組んでいる。   【企業メモ】 創業=1996年▽所在地=岡山県加賀郡吉備中央町▽業種=バッグ、アパレルの製造卸


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