《連載・次代への襷》① ライフスタイルアクセント (本紙1月7日付け)
2013/06/14 11:01 更新
「このままではメード・イン・ジャパンが消えてしまう。優れた製品を世界に発信したい」。12年11月、都内のバーで、スーツ姿の男性などを前に熱弁をふるうのはライフスタイルアクセント(熊本市)の山田敏夫(30歳)代表だ。この日は、ファクトリーブランド専門の新サイト「ファクトリエ」の出資者を集めたパーティーが開かれていた。
ファクトリエは、中間業者を介さず生産者とダイレクトに組み、日本の高品質な商品を低価格で提供するサイトだ。工場というと裏方のイメージが強いが、山田代表は「大学時代にフランスに留学し、海外ブランドは非常に工場を大切にしていると感じた」と語る。
実家が老舗婦人服店だったため、幼い頃からたくさんの日本製品を見てきた。メード・イン・ジャパンが海外生産によって淘汰(とうた)されている要因がコストであるなら、「日本で作って、安く売ることはできないか?」。その答えが、工場と消費者をできるだけ短いパイプでつなぐファクトリエだった。
12年1月に自分の会社を立ち上げ、第1弾としてシャツメーカー、ヒトヨシ(熊本県人吉市)のワイシャツが完成した。中間コストを省くことで細部までこだわった、ファクトリエオリジナル商品だ。立体的な台襟やカフスは表と裏の生地の寸法を変えることで体にしっくりなじみ、ボタンには美しい輝きの白蝶貝を使う。価格は税込み9450円で、「通常なら倍以上する品質」という。
事業資金は一般から募集し、計画を大幅に上回る114万円を集めた。製品を購入し、パーティーにも参加した出資者は「着心地が全然違う」と満足げだ。同郷でもある山田代表の熱意に応えたヒトヨシの吉國武社長は、「本物の価値観をお客様や売り場と共有したい」と、取り組みの狙いを語る。
ヒトヨシだけではない。12月には第2弾としてクスカ(京都府与謝郡)のネクタイを発売。若き起業家が目指した作り手と使い手の新たな関係が、少しずつ形になり始めている。
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メード・イン・ジャパンを維持する上で課題になるのが、生産現場の後継者不足だ。世界に誇る優れた技術を、誰に受け継いでいくのか。連載では、工場を引っ張る若き経営者や若手の登用、人材育成に積極的な企業など、ものづくりの襷(たすき)を未来につないでいこうとする取り組みを紹介していく。
【企業メモ】本社所在地=熊本市▽創業年=12年1月▽業種=ファッション・インターネット事業