日本的な“カワイイ”の価値感は、いまや国境を越えて世界に広がっている。中国・深セン発のファッション&カルチャー誌『リトル・シング』は、ガーリーでクリエーティブな世界がまさにカワイイの感覚に当てはまる雑誌だ。日本でもじわじわファンを広げており、アジアに進出している日本ブランドが広告出稿するケースも出てきた。“オリーブ少女”ならぬ“リトル・シング少女”がアジアで増殖中だ。
白人モデルを起用したストーリー性の高い表紙をめくると、飛び出す絵本のように紙細工の仕掛けが立ち上がる。リトル・シングには、撮り下ろしの凝ったビジュアルやインタビュー記事、ハンドメード品の紹介などが詰まっている。カタログ的な商品紹介やストリートスナップはほとんど無く、アートブックのような骨太な作りだ。
同誌はアートディレクションなどの仕事をしていた中国人夫婦が08年に立ち上げた。隔月発行で公称部数は22.5万部、中国の22都市と香港、台湾、日本で販売している。日本での販売場所は代官山蔦(つた)屋書店やラフォーレ原宿のウォール、大阪スタンダードブックストアなど。ウォールでは「欲しくて探していたという人が多い。大量に入荷しているわけではないが、入荷するといいペースで売れて完売する」と言う。1300円(本体)と雑誌としては比較的高額にも関わらず、「一度購入するとリピーターになる人が多い」。
リトル・シングは雑誌を発行するだけでなく、オリジナルブランドの企画やショップの運営も行っている。ショップは深センにあり、「あちゃちゅむ」などの日本ブランドも含め、各国の新進のクリエーターブランドを中心に集めている。ポップアップショップも行っており、これまで上海の商業施設K11などで催事をしてきたという。上海の催事に集まった女の子たちのスナップを見ると、原宿の女の子と何も変わらない。
リトル・シングに広告出稿する日本ブランドも出てきた。中国に出店しているジュンの「ロペピクニック」は、12年3月に出稿したという。「ロペピクニックの認知を中国で上げるため、読者層とブランドの親和性が高そうな同誌に出稿した」と同ブランドのPR担当。「同誌のファンは掲載ブランドに強い興味を持っていて質が良く、実際来店にもつながった。顧客化に向けて出稿を前向きに検討したい」という。
リトル・シングは、日本では手作り品の販売サイトの運営や新進ブランドの営業支援などを行うオープンクローズが代理店となっている。雑誌の認知を高めるプロモーションの一環として、雑誌イメージに沿った日本の新進クリエーターブランドを集めて、JFWインターナショナル・ファッション・フェア(JFW‐IFF)1月展に出展した。参加ブランドは「ドラゥズ・アンド・イエット…」「タマキフジエ」「ヒオ」など。
(2014/02/10付)