22年春夏ニューヨーク・コレクション アウターとして着るブラジャー浮上

2021/09/15 10:59 更新


 22年春夏ニューヨーク・コレクションは、ツインセットやスリーピースの一つとして着るブラジャーとブラトップが浮上している。アウターとして着るブラジャーは、昨今のフェミニズム運動を象徴しているかもしれない。自分に自信のある女性が開放的な気分を楽しめるアイテムといえる。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

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〈フィジカル〉

 ロダルテは、ウェストビレッジにある低所得のアーティスト用住宅ビルの中庭でショーを行った。風をはらんでひらひら揺れたり膨らんだりする布の動きに焦点を当てている。風の強い日で、裾までふらし布をつけたドレスは風をはらんでまんまるに広がり、ダイナミックな効果を生み出した。大輪の花をスパンコールで描き、キノコをプリントしたドレスもある。ロダルテにしては無地のおとなしい服がある一方で、シンプルだが肌を露出した服も目立つ。ボンテージや総レース、左足のみフルレングスで右足を全て露出したパンツはきわどい。エンディングは、同じ形の無地のシンプルなドレスに着替えたモデルたちが裸足で登場。最後のモデルは、両手で小さなサボテンの鉢を大事そうに抱えている。コロナ禍で自然に憧れ、シンプルでナチュラルなものに引かれることの反映であろうか。

ロダルテ
ロダルテ

 マイケル・コースは、セントラルパーク内の著名レストラン、タバーン・オン・ザ・グリーンのテラスでショーをした。会場に飾られた3000本のバラと、ブロードウェー女優アリアナ・デボーズの明るい歌声とバンドの生演奏が、うきうきした気分をつくる。テーマは「都会のロマンス」で、ペールブルーのトレンチコートやペールピンクのバルマカーンコートと、ロマンティックだが機能的なアイテムが並ぶ。ギンガムチェックのフレアスカートには、黒のブラジャーとカーディガンのツインセットを合わせる。ブラトップとスカートのセットアップも多い。赤いハートとそのハートを包み込むように黒い手を編み込んだ黒のカシミヤセーターは、ニューヨークで食べ物に困窮する人々に食事を提供する慈善団体、ゴッズ・ラブ・ウイ・デリバー(我々が届ける神の愛)に全ての利益を寄付するためにつくった。コースはエイズが流行した80年代末からこの団体を手助けしている。同団体は今も、1日1万食をつくっているという。

マイケル・コース

 モスキーノは、ブライアントパークでランウェーショーを行った。小雨が降る中、来場者たちは濡れた椅子を拭き、傘を差しながらステージを見上げる。天気は残念だったが、コミカルでコケティッシュな服のオンパレードが陰鬱(いんうつ)な気分を吹き飛ばしてくれた。シルエットとヘアスタイルは60年代調。ブラトップ入りスリーピースも超ミニドレスも、フォルムはミニマル。柄は、幼児向け絵本に出てきそうな甘くファンタジックな動物たち。飛び出す絵本さながらにキリンやポニーがにょっきり出た服もある。童心に返って現実逃避しようということか。今回、白斑の女性と車椅子の女性がモデルで登場した。外見にかかわらずファッションを楽しもうというメッセージを感じられた。

モスキーノ

 コーチは、ハドソン川沿いの波止場でショーをした。中央に巨大なスクリーンを設置し、「コーチTV」で架空のテレビ番組を流す。そのうち、モデルたちが地下鉄から外に出てくる光景が映し出される。ストリートでさらにモデルが加わり、画面上で徒党を組んで行進してくる。背景のビルが会場近くのビルと気付いた途端、モデルたちがリアルの会場に入ってくる。その後はモデルたちが歩き回る「リアル」と、それがスクリーンに映し出される「デジタル」が交錯する。リアルとデジタルをうまくミックスした面白い見せ方。フィジカルのショーを復活したブランドはほぼ、コロナ以前と同じ見せ方をしている。けれども、フィジカルでもデジタルを斬新に取り入れた演出がもっとあってもいいと思う。服は、コーチの初代ヘッドデザイナー、ボニー・カシンのアーカイブコレクションを今の都会のライフスタイルに合わせてよみがえらせたということだが、かなりラフなストリートカジュアルが多い。「アフォーダブル・ラグジュアリー」がコーチの立ち位置のはずだが、ここまでドレスダウンすることを顧客は求めているのだろうか。

コーチ

 アナ・スイは、30年以上人気が続いているフレンチベトナム料理のレストラン、インドシンでフロアショーをした。カクテルとオードブルがふるまわれ、トロピカルなカクテルパーティー状態。アナ・スイのテーマ「パラダイス」にふさわしい雰囲気がショーの前にできていた。アナ・スイにしてはシンプルな服、またはレイヤード。レイヤードのポイントはブラジャーとサーフシャツで、スポーティーでイージーなレイヤードルックを組み立てた。

アナ・スイ

 スプリングスタジオでショーを行ったスタジオ189は、アフリカの歌と太鼓のライブパフォーマンスで幕を開けた。続いて女性が登場し、自由を勝ち取る精神についての随筆を、「9・11」同時テロ20周年にも絡めて朗読。ランウェーには、ローティーンとおぼしき女の子も3人登場。初めて見せた水着を着たのは、ソバージュヘアで口ひげを生やしたモデルだった。アフリカファッションが、色々な方向に広がっていると感じた。

スタジオ189

(写真=ロダルテはGreg Kessler)

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