【ニューヨーク=杉本佳子通信員】23~24年秋冬ニューヨーク・コレクションは、神話や物語に着想したファンタジックなコレクションが出てきた。戦争、自然災害、難民、環境問題。厳しい現実から逃避したくなる気分を反映しているのだろうか。
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トム・ブラウンはハドソンヤードにあるアートセンター、ザ・シェドに大掛かりなインスタレーションを持ち込んだ。天井から白い大きな惑星と星をつり下げる。砂を敷きつめた上に置かれたのは、砂漠に不時着した白い大きなプロペラ機。メンズとウィメンズのショーで、パイロットは女王蜂をほうふつとさせるシェイプにデフォルメしたアビエータースーツをまとう。星の王子様も登場。迷える2人の旅人を軸に描くテーマは孤独、喪失、決意、探求の物語だ。星の王子様が着ていたような白いロングドレスには、カラフルな色を配したモダンアート風のプリントを描く。モデルの手と足から伸びた十数センチはある白く長い爪が、毒気とユーモアを漂わす。その後、手織りのファンシーツイードで仕立てたオーバーサイズのテーラーカラーのコートが並ぶ。肩を横に張り出し、ボリュームを強調する。
コートの中に着ていたのは、ジャケットの袖山を縫い残したり、ネクタイを着けたまま脱ぎかけたようなシャツのパーツを付けたりした解体・再構築服。シルエットはロング&リーンで、ミドリフ丈のジャケットとロングスカートが多い。ジャケットの下は艶のあるペーズリージャカードのコルセット。「最も大切なことは見えないもの」というメッセージを込めた。当日はバレンタインデーで、ブラウンは最後に客席にいたパートナーのアンドリュー・ボルトンに近づき、プレゼントとおぼしきものをちょっとはにかみながらわたしていた。
アルトゥザッラは、ギリシャ神話と自然にインスパイアされたパワフルなコレクションを見せた。本来スポーティーなアイテムをボリュームと素材で存在感のあるラグジュアリーに仕上げ、温かみのある美しい色と絞り染めで優しい気分を入れている。