「サヴェージビューティー」開幕
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で、2010年に他界したアレキサンダー・マックイーンの回顧展「サヴェージビューティー」が始まった。
1年前から前売り券をオンライン販売したところ、今年はじめには3万枚が売れ、新たに5万枚を用意。会期も2週間延ばした同博物館最大級のファッション展となっている。(ロンドン=若月美奈通信員)
11年にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された同名の回顧展をベースに、新たに66点を加えた244点の服や小物を展示。見所は今回新しく設けられた「ロンドン」コーナーで、3シーズン目の「ザ・バーズ」(1996年春夏)からジバンシィ時代まで、クリエーティブディレクターとしてクリーションに関わっていたスタイリストのケイティ・イングランドの協力により、イングランド本人や当時のスタッフ、友人が所有する作品が集められている。
小部屋に分かれた場内は「ロマンティックゴス」「ロマンティックエキゾティシズム」などのテーマ別の展示になっている。加えて、マジックミラーに閉じ込められたモデルとフィナーレに登場したガスマスクをした裸体の女性が話題をよんだ「ヴォス」(01年春夏)や自ら作り上げた最後のコレクションとなった「プラトーズアトランティス」(10年春夏)などは、映像も使った独自の展示となっている。06年秋冬のショーで話題になったケイト・モスのホログラム映像も見られる。
レースやフリル、タータンなどマックイーンの作品にはいくつかのキーワードがあるが、異常なまでに固執していたのは羽根だ。羽根のドレスの数々は、アトリエに昂然と鳥の死骸が転がっていたことを思い出させる。
着々と進化しながらも、デビュー当初から終盤まで、展示会タイトルにもなった「サヴェージ」(荒々しい、激しい、野蛮の意)を超越した一貫した美意識に包まれている。もっとも、最後の「プラトーズアトランティス」は明らかに違う。
発表当時は次なるページをめくるかと思われたが、今改めて見ると、この時にはすでに心ここにあらず、抜け殻のように思えてならない。過去の自分の作品を振り返り、嫌いなシーズンは自らけなしまくったマックイーン。はたしてこのコレクションを好きだったのだろうか。会期は8月2日まで。