京都の街を歩いていると、ジーンズを買う外国人観光客をよく見かけます。日本のデニム製品は、海外から訪れる人々にとってわざわざ日本で購入したい品の一つになっているようです。そんな光景を見ると、6年前にベルギーでデニムを探し続けた日々を思い出します。
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定番が手に入らない
当時、私はアントワープ王立芸術アカデミーの1年生でした。課題でジャケットを制作することになり、デニムだけを使って仕立てるという条件がありました。そこで私が使おうと考えたのは、綿100%の12~13オンスのセルビッジデニム。「リーバイス」などのジーンズに使われるような、定番のデニムをイメージしていました。
ところが、いざ制作に取りかかろうとすると、目当ての生地が見つかりません。ベルギーの生地屋を回っても、店頭にあるのはポリエステルなどの混紡品や想定よりも薄い生地ばかり。店員に理由を尋ねると、綿100%のデニムを買う人がほとんどいないことを教えてくれました。自分で服を縫う人は、着やすく、扱いやすいストレッチ素材を選ぶことが多いそうです。私が探していた厚手の綿100%デニムは、家庭用ミシンでは縫製が難しいため、一般の生地屋にはほとんど置かれていなかったのです。結局、古着を解体して使いました。
ベルギー中の生地屋を回り続けた日々は、今でもよく覚えています。定番だと思っていた生地が手に入らないことに衝撃を受けるとともに、この経験が日本の物作りの背景に関心を持つきっかけになりました。
日本の物作りへのこだわりについては以前から知っているつもりでした。しかし、ベルギーで理想のデニムが手に入らない経験を通じて、その価値を初めて実感しました。日本はデニムを織る工場や縫製工場が国内にありますが、ヨーロッパでは必ずしもそうではありません。ベルギーのブランドもデニム製品を数多く作っていますが、生地の生産や縫製を国外の工場に委託するケースが多く余剰生地が国内に流通する機会は限られます。そのため、日本では当たり前に手に入ると思っていたデニムもベルギーでは探すことすら難しかったのです。この違いに直面したことで、素材を選べる環境やそれを支える物作りの積み重ねにも目が向くようになりました。

日本が培ってきた力
何本も手に取り、試着を繰り返して自分に合う一本を探し求める。そんな外国人観光客の姿の向こうに、かつて自分がベルギー中の生地屋を回り、日本では身近なデニムを探し歩いた日々が重なります。もちろん、観光客が日本でデニム製品を買い求める理由は一つではないでしょう。しかし、生地の質や縫製、加工へのこだわりなど、日本が培ってきた技術力や工夫は、人々を引きつける理由の一つになっているのではないでしょうか。京都の店先で出合った光景は、海外で気づかされた日本の物作りの価値を改めて見つめ直すきっかけになりました。

