「私たちは服装を〝社会的な言語〟だと考えています」――街で共通する服装やスタイルを持つ人々を探し、同じ背景やポーズで撮影して並べる写真プロジェクト「Exactitudes」(イグザクティテューズ)。オランダ出身のアリ・ヴェルスルイスとスタイリストのエリー・ウイッテンブロークは94年から30年以上、人々の服装を記録してきた。その視点は多くのデザイナーに影響を与え、デムナ・ヴァザリアもその一人。バレンシアガで手掛けた最後のプレタポルテコレクションを「Exactitudes」と名付け、2人をビジュアル制作に起用した。25年に写真集を刊行し、プロジェクトに区切りをつけた2人に聞いた。
(坂入純平)

個人と集団の真ん中
――集団として見ることで、何が見えるのか。
一人ひとりはユニークに見えますが、集団として見るとパターンや共通点がはっきりと見えます。一人ひとりの小さな違いも浮かび上がります。
――30年間で変化は。
当初、私たちが魅了されたのは、服装を見るだけで、どの世代やサブカルチャーに属しているのかをすぐに感じ取れることでした。今ほど選択肢が多くなく、服装という「言語」がより明確でした。
今では「スタイル」という概念が混ざり合っています。インターネットによって以前なら出合わなかったものを組み合わせられるようになりました。一つの明確な「社会的ユニフォーム」はもはやありません。複数のペルソナを持つことが受け入れられたからです。
それでも、人間の根本的な欲求は変わっていません。私たちは今も服を通して自分が何者かを示し、人とのつながりを求めます。興味深いのは、「どこかに属したい」と「個人でありたい」を同時に求めるようになったこと。個性は完全に唯一無二であることより、どう組み合わせるか、つまり「何を着るか」ではなく「どう着るか」です。
インターネットで世界が小さくなっても「場所」は消えていません。むしろ地域性はこれまで以上に意味を持ちます。気候や地理、習慣、音楽、建築、歴史は、今も人々の服装に痕跡を残しています。
30年たっても、最も興味があるのは、個人と集団の間にある緊張関係。服はその真ん中にあります。服装は個人的なものですが、決して個人的なものだけではありません。


矛盾に満ちる現実
――多くのデザイナーが参照してきた。
ストリートとランウェーの関係は、常にファッションの中で最も活気のある部分でした。デザイナーが提案したスタイルは、ストリートの人々によって独自に解釈され、装いを通じて変化していきます。
デザイナーがこのプロジェクトに引かれるのも、私たちが服を単なるファッションではなく「社会的な言語」として見ているからだと思います。
私たちとデムナが共有するのは、おそらく「リアルネス」への関心です。「リアルとは自分が感じるもの」。ストリートは矛盾に満ちています。磨き上げられた「個性」のイメージよりも、しばしば興味深いものです。
デムナには、社会にあるものの文脈やスケール、意味をずらす才能があります。Exactitudesも写真を通じて、「社会的なユニフォーム」を切り出し、違う見方を可能にします。
――プロジェクトに区切りを付けた。
際限なく拡張するアーカイブではなく、時代を封じ込めたカプセルのようなものにしたかった。私たちが見てきたものが「次の何か」へと消えてしまう前に、残しておきたかったのです。
最も強く残っているのは、服そのものではなく、人々です。特にAI(人工知能)が台頭する今、人間らしさこそが私たちを救える唯一のものです。
