インテリア、生活雑貨系ライフスタイルショップがアパレル販売を定着させている。いずれも来店動機はアパレル購買ではなく、ショップコンセプト。客は店の生活スタイルの考え方に共感し、それに沿ったファッション品を購入しているのが特徴だ。どちらかというと衝動買いが多く、店の生活提案を感じることでアパレル需要が刺激されていることがわかってきた。(武田学)
■衝動買いを呼ぶ
コンシーズが展開する「クラスカギャラリー&ショップドー」(写真下)。モダンで実用的なデザイン雑貨、伝統工芸品などの生活雑貨を中心にギャラリー風のショップを展開している。雑貨と親和性のあるナチュラルなアパレルと服飾雑貨を揃え、売り上げ比率は全体のほぼ半分を占めるようになった。
「身近な生活に生かせるライフスタイルショップとしてファッションは切っても切れない商品」とし、SCに出店するころから扱い、オリジナル企画にも着手した。特に人気商品の麦わら帽子のほか、10年から輸入販売している台湾の「ヂェン先生の日常着」もファンを広げている。
アクタスのサステイナビリティー(持続可能性)やエシカル(倫理的な)を考えたインテリアライフスタイル店「スローハウス」は米国のナチュラル生活誌『キンフォーク』と提携したファッションブランド「アウアー」を14年春から販売している。
同社はインテリアショップ「アクタス」で仕入れによるアパレル販売を開始したが、現在はアウアーを軸に、スローハウスのほか、一部のアクタスでもインショップなどで販売している。スローハウスのコンセプトに沿ったブランドで〝スローリビング〟がテーマ。スローハウスの中での売り上げ比率は1割強となった。
ウェルカムのインテリアショップ「ジョージズ」は08年ごろからアパレルを導入し、カットソーを中心に服飾雑貨も加え、オリジナル企画を拡充してきた。今では売り上げ構成でレディスアパレル・雑貨20%、アクセサリー5%、メンズアパレル10%弱にまで高まった。
ただ「あくまでもライフスタイルショップの中の1カテゴリーで、メーンにすることはない」。ファッションは「一つはトレンド感を出し、品揃えに鮮度を出す。もう一つは季節感を打ち出しやすい。インテリア雑貨だけでは難しい」(清涼昌浩副社長)との役割が固まってきたという。
共通するのは、ショップが提案する生活観やスタイルの1カテゴリーとして導入している点だ。アパレルの比率が高くなってもアパレル店にはしないのがポイント。ファッションの購入者の多くは目的買いではなく、来店してファッション品を買う、いわば衝動買いだ。店のコンセプトに触れることで、購買が喚起されるようだ。
■追加体制組まず
裏を返せば売れ筋や色を切らしても不満を抱く客は少ない。ほとんどのショップは売れ筋の追加体制は組んでおらず、新商品を細かく投入して新鮮さを保つ。アパレル専門店に比べると奥行きはないがプロパー消化率は高い。客単価や収益性を高める効果も大きい。
もちろん、「ファッションを店の考え方を踏み越えて追っかけていくとライフスタイルショップのスタンスを崩す」(清涼副社長)ため、各社ともアパレルをことさら深追いはしない。先買いもほとんどない。ほぼ実需に沿った商品だけが売れる。
また、EC販売でのファッションの売り上げはなかなか伸びない。リアル店舗では店の考え方がファッションの購買を喚起するが、個々のブランドやモノそのものが主要な選択基準となるネットでファッションを押し出すのは難しい。
その中でアクタスはアウアーをスローハウスの中でもブランドとして際立たせることを試みた。しかし、各社とも店の一翼として育てることが基本だ。
ライフスタイル提案の一環でアパレルがある程度売れている現実は、必ずしも服を買うという目的を強く持たない客に対しても、別の角度から需要を喚起できることを示している。
アパレルを品揃えに取り入れる他業種はインテリア系以外でも多様な業態で増えつつあり、アパレル需要の開拓は専業以外の多方面から進んでいる。