【センケンコミュニティー】
漫画やアニメ、ゲームは今や、日本を代表するコンテンツです。しかし、それらの市場が実際にどれほど盛り上がっているのか、気にはなるけれど体感する機会がないという人も多いのでは。
そこで今回はセンコミ取材班が、16年の年末に東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット91」(コミックマーケット準備会運営)に潜入!たくさんの人でごったがえす会場の熱気と、ジャパニーズカルチャーの最前線をお伝えします。
年末も押し迫った16年12月29日、センコミ取材班は東京・有明に集合した。この日から3日間、東京ビッグサイトの東、西の両ホールを使って〝冬コミ〟(夏と冬の年2回開催)が開かれていた。
会場に到着してまず驚いたのがあまりの人の多さ。75年に同人誌展示即売会として始まった当初は、参加者700人(推定)の規模だったが、最近では50万人超の規模に成長したという。芋洗い状態とはまさにこのこと。道に迷い、人混みに酔い、プレス受付にたどり着くまでに30分もかかってしまった。
■長蛇の列に圧倒される
人気の同人誌サークルのブースには、数百人もの長い行列。1冊500円としても…と、思わず頭の中で皮算用してしまう。ある男性客は、「一緒に来た友人は、去年20万円使っていた。今回もすでに5万円使ったようだ」と話す。同人誌の単価は安いが、企業ブースなどで買い物するとあっという間に万単位になるようだ。いやはや、3日間でいったいどれほどの現金が動くのか。ファッション業界は若者が服を買わないと嘆いているが、ここでは全力で経済が回っている。
企業ブースでは、「アースミュージック&エコロジー・ジャパンレーベル」(ストライプインターナショナル)や丸井グループも出展していた。これまでも複数回出展してきたアースは、「夏目友人帳」と協業したワンピースなどを販売していた。
コミックマーケット、イコール同人誌というイメージがあったが、「ロム」と呼ばれるCD型の商品を販売するブースも目立った。コスプレ姿の写真を収めたデータ集で、可愛い女性コスプレイヤーさんたち自らが販売。(取材班の男性記者もついつい購入していた)。大学生のコスプレイヤーさんにコスプレの魅力を聞くと、「自分の好きなキャラと同じ格好ができる。クオリティーの高いコスプレイヤーさんを見ると、リアル○○が現世に舞い降りた!という気分になる」とのこと。着て楽しい、見て楽しいというわけだ。
■ゲーム系のコスプレ人気
物販に加え、屋外にはコスプレゾーンがいくつか設けてあり、寒さにも負けず(絶対に寒いと思うが)、頭から足の先まで全身ばっちり決めたコスプレイヤーたちと、一眼レフカメラでそれを撮影する来場者たちがわきあいあいと交流していた。コスプレイヤーさんも慣れたもので、我々が取材でカメラを向けるとさっと色んなポーズを取ってくれた。
多かったのが「フェイトグランドオーダー」「艦隊これくしょん」「ラブライブ!」「アイドルマスター」などのコスプレ。初日だけの傾向だが、意外にも漫画やアニメより、ゲーム関連のコスプレが目についた。会場全体では男性参加者がメインだったが、コスプレは女性の方が多く感じた。消防士や軍人など、男性コスプレイヤーの姿もあった。
コスプレのための経費は、全身で1万~3万円ほど。服に加えてウィッグやカラコン(カラーコンタクトレンズ)も必須だ。全体的に完成度が高く、衣装はネットで買ってサイズ調整や装飾など自分でカスタマイズしたり、生地を買って自作する場合もあるという。ある若い女性は、「既製品ならスワローテイル、アコス、コスパティオとか。生地はユザワヤやオカダヤ、日暮里のトマト。普段着ているアパレルブランドはあまり思いつかないけれど、衣装屋さんの名前ならいっぱい出てくる」と笑う。
コスプレ会場の様子を眺めていると、とにかく皆楽しそう。ゲーム作品のコスプレ衣装を自作して着ていた女性の、「コスプレをするようになって、今まで関わったことのない人と年齢関係なく知り合えるようになった」というコメントも印象的だった。ほかにも、「交友関係が広がった」「撮影会をきっかけに友人ができた」といった声が聞かれた。例えば初対面でも、ひと目で同じ作品のコスプレをしていると分かるので、自然と交流が生まれるようだ。
■取材を終えて
記者A:「叶姉妹がコミケにやってくる」。そんなネットニュースに心踊らせ初参戦したが、おびただしい人の数でそれどころではない。百貨店やSCが「アニメや漫画は確実に集客できるコンテンツ」と協業イベントを連発している理由が少しわかった。来場者いわく「1日で10万円以上使う人なんて、ざらですよ」。3日間で55万人が訪れたという今回。仮に1人1万円を消費すると、55億円が動いたことになるから驚きだ。
記者B:以前から興味はあったが、「熱心なファンが集まる聖域に、生半可な気持ちで行ってはいけない気がする…」と二の足を踏んでいた。しかし実際に取材してみると皆親切で、知らないことを色々教えてくれた。最近はライトな一般客も増えているそうだ。たくさんの人が消費や交流をすることで生まれる熱量は、異業種であっても学ぶものが多い。しかし、たった数時間の取材にもかかわらずどっと疲れた。参加するには体力が必須だ。