【記者の目】不便を解消する総合型衣料品売り場

2018/07/16 06:30 更新


【記者の目】不便を解消する総合型衣料品売り場 買う場がない地域を捕捉 地方、都市部ともニーズ見いだし

 大手GMS(総合小売業)で、衣料品売り場の圧縮や店舗閉鎖が続く。再び選ぶ楽しさを打ち出すなど回復策を進める、しまむらの既存店売り上げは一進一退。総合型の衣料品売り場に厳しい状況が目立つ。ただ、ニーズがなくなったわけではない。オーバーストア状況は続いているが、この間の商環境や社会の変化の中で、日常普段着を買う場に困るエリアはある。こうしたニーズを捉えようと動き出した総合型売り場がある。

(田村光龍=東京編集部大型店担当)

広い商圏に期待

 ベイシアが3月末、衣料品の新業態「エブリーウェア」2号店を出店したのは千葉県勝浦市。千葉県内でも東京に遠い外房で、人口減と高齢化が進む地域。5キロ圏の人口は1万8000人にとどまる。地元の洋品店などはすでになく、チェーン店の多くは出店に二の足を踏むため、衣料品を買う場がほとんどないエリアだ。エブリーウェアが主要顧客に設定する30、40代にとってはなおさらでもある。

 エブリーウェアはSPA(製造小売業)を志向、980円と1900円に絞った価格、30、40代に向けて整えた売り場環境などを武器にする。新設のベイシアスーパーセンター勝浦店内に売り場面積800平方メートルでオープンしており、ほかの食品スーパーとの差別化につなげる役割とともに、衣料品としては競合がないことから広域からの集客が期待される。隣に保育園が開園したことも追い風にする。開業後の売り上げ状況は、商圏が広いだけに休日が中心になっているとはいえ、「計画通りで推移している」。地域にそれまでなかった衣料品を買う場を提供している形だ。

 エブリーウェア自体、実験中の業態ではある。1号店は一定の商圏人口はある一方で、競合の激しい栃木県小山市のロードサイドで、自社のNSC(近隣型ショッピングセンター)に別棟の専門店として出店していた。勝浦店と併せ検証することにしており、当面は改装で導入することを検討している。

エブリーウェア2号店が入るベイシアスーパーセンター勝浦店

小型でも地域対応

 ライフコーポレーションは18年度、首都圏でこれまでにオープンした2店はいずれも衣料品売り場を構える。ライフ東馬込店(東京都大田区)で165平方メートル、東府中店(東京都府中市)で240平方メートルと面積は限られるが、インナーなどの実用衣料にとどまらず、日常普段着を揃える。食品スーパーの同社は、同業他社が縮小する中でも差別化カテゴリーとして衣料品の扱いを続けており、小型であっても日常着を揃えるあり方を追求してきた。17年度は久しぶりに増収に転じていた。

 都市部の居住地域を主な出店エリアにしているが、ほかに日常着を買う場がないケースは少なくなかった。人口の都心回帰によりそうした地域は増えており、さらに、GMSの退店が拍車をかけている。そこで、食料品と一緒に買える利便性の提供と併せ、「買う場がない不便を解消する」役割を担っている。

 東馬込店ではスポーツ、東府中店では通勤対応のレディスのコーディネートと、小型とはいえ、地域特性への対応も重点にしながら売り場を増やしている。

小型売り場でも地域対応(ライフ東府中店)

ECでニーズ捉え

 食品スーパー、サミットの子会社で総合衣料専門店「コルモピア」を運営するサミット・コルモは、17年6月にアマゾンと楽天でECを立ち上げた。出店よりも既存店の活性化を優先して基盤整備を進める同社にとって〝新店〟の位置づけ。分母は小さいとしながらも、月ごとに売り上げを伸ばしているという。

 店舗のバックヤードを使った運営で、特別なブランドなどがあるわけではなく、価格の打ち出しもそれほど強めているわけではないが、全国からの学校関連を含め子供向けなどが安定しており「リアル店1店の規模」への成長が見込める推移という。これも総合型が買う場のないエリアを捉えるものといえる。

 消費者にとって買う場がない立地は、小売りにとっては収益性の確立に工夫が必要でもある。しかし、大きな需要が見込めるところは競合も激しくなる。そこで、競うだけでなく、非効率の克服に力を注ぎ、不便を解消することは、総合型の役割に映る。

【繊研新聞本紙 2018年05月28日付から】

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